囲炉夜話 / 第百六十八則・眉眼鼻口一字を成して苦と曰ふ
人心統耳目官骸,而於百體為君,必隨處見神明之宰。 人面合眉眼鼻口,以成一字曰苦,知終身無安逸之時。
新字:人心統耳目官骸,而於百体為君,必随処見神明之宰。 人面合眉眼鼻口,以成一字曰苦,知終身無安逸之時。
書き下し
人心は耳目官骸を統べて、百體に於いて君為り、必ず隨處に神明の宰を見すべし。 人面は眉眼鼻口を合はせて、以て一字を成して苦と曰ふ、終身安逸の時無きを知る。
現代語訳
人の心は耳や目、手足や骨格をまとめ、体全体の主君となっています。どこにいても、その霊妙な心が主宰していることを示さなければなりません。人の顔は眉と目と鼻と口を合わせて、「苦」という一字を形作っています。そこから、一生のうち安楽に過ごせる時はないことが分かります。
解説
体と顔から人生の教えを読み取る、少し遊び心のある対句です。上の句は、心は五官と体の君主だという儒学の古い考えに立ち、どんな場面でも心が主となって体を動かすべきだと言います。神明の宰とは、澄んだ心の働きが主宰することです。下の句は、眉が草かんむり、目と鼻が十、口が口の形になって、顔全体が苦の字に見えるという見立てです。人は生まれつき苦の字を顔に掲げているのだから、一生楽をしようと思うなと言うのです。悲観ではなく、苦労を当たり前と受け止めて心を主に立てよという励ましとして読めます。
この章句が説くこと
心苦労修身主宰処世
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