囲炉夜話 / 第百六十二則・人の生くるや直し
人之生也直,人苟欲生,必全其直。 貧者士之常,士不安貧,乃反其常。
書き下し
人の生くるや直し、人苟くも生きんと欲せば、必ず其の直を全うせよ。 貧は士の常なり、士貧に安んぜざれば、乃ち其の常に反く。
現代語訳
人が生きていられるのはまっすぐさによるものです。人がもし生きたいと願うなら、必ずそのまっすぐさを守り通さなければなりません。貧しさは士にとって常のことです。士が貧しさに安んじないのは、かえってその常に背くことになります。
解説
二つの古典の言葉を受けて、生き方の芯を示す対句です。上の句は『論語』雍也篇の「人の生くるや直し」に基づき、人が生きる本来の姿は正直であり、それを守ることが本当に生きることだと言います。下の句の「貧は士の常」は、『列子』に見える栄啓期の言葉として知られます。学問を志す者にとって貧しさは当たり前であり、それを嫌って曲がったことに手を出せば、士としての本分を失うというのです。直を守ることと貧に安んじることは、裏表の関係にあります。貧しさを我慢せよというより、暮らしのために心を曲げないための構えとして読みたい句です。
この章句が説くこと
正直安貧論語修身士
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