囲炉夜話 / 第百二十九則・此の心即ち白日青天
愁煩中具瀟灑襟懷,滿抱皆春風和氣。 昧暗處見光明世界,此心即白日青天。
新字:愁煩中具瀟灑襟懐,満抱皆春風和気。 昧暗処見光明世界,此心即白日青天。
書き下し
愁煩の中に瀟灑の襟懷を具ふれば、滿抱皆春風和氣なり。 昧暗の處に光明の世界を見れば、此の心即ち白日青天なり。
現代語訳
憂いや煩いの中にあっても、さっぱりとした胸の内を持っていれば、胸いっぱいに春風のような和やかな気が満ちます。暗く閉ざされた所にあっても、光明の世界を見いだせば、この心はそのまま晴れた日の青空です。
解説
苦しい境遇の中でも、心の持ちようで明るさを見いだせると説いた則です。前半の瀟灑は、あか抜けてさっぱりしたさま、襟懐は胸の内のことです。憂いや煩いの真ん中にいても、心をさっぱりと保てば、胸の中は春風のようになると言います。後半は、暗くて先の見えない場所にいても、光明を見いだす心があれば、その心そのものが白日青天、つまり晴れ渡った空になると言います。前半は煩いの中の和やかさ、後半は暗さの中の明るさで、どちらも境遇は変わらなくても心の天気は自分で変えられるという点でつながっています。今日でも、困難な状況で周りを明るくできる人は、状況を変える力より先に、心の持ち方を変える力を持っているものです。
この章句が説くこと
心光明和気逆境修身
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・修身・心に城池有り、口に門戶有り心は城池有るを要し、口は門戶有るを要す。城池有れば則ち出でず、門戶有れば則ち縱にせず。
-
『呻吟語』外篇・天地・心は就ち是れ天なり心は就ち是れ天なり。心を欺くは便ち是れ天を欺くなり。心に事ふるは便ち是れ天に事ふるなり。更に須らく蒼蒼の上面に向かひて討むべからず。
-
『呻吟語』内篇・修身・心を大にし虛にし平にし潛め定む其の心を大にして天下の物を容れ、其の心を虛にして天下の善を受け、其の心を平にして天下の事を論じ、其の心を潛めて天下の理を觀、其の心を定めて天下の變に應ず。
-
『正法眼蔵随聞記』巻一示して云く、人は思ひ切て命をも棄て、身肉手足をも截ことは中々せくるゝなり、然あれば世間の事を思ふに、名利執心の為にも多くかくの如く思ひ切るなり、只依り来る時に、事に触れ物に随て、心品を調ふること難きなり、学者身命を捨ると思ふて、且くおしゝづめて、云ふべきことをも、修すべきことをも、道理に順ずるか順せざるかと案じて、道理に順せば云ひ、若くは行じもすべきなり、
-
『呻吟語』内篇・存心・心は天平のごとくならんことを要す心は天平のごとくならんことを要す。物を稱る時、物は忙しくして衡は忙しからず。物去る時、即ち懸空して此に在り。只だ恁く靜虛中正なれば、何等ぞ自在ならん。
-
『呻吟語』外篇・人情・心は二三を怕れ、情は一を怕る心は二三を怕れ、情は一を怕る。