囲炉夜話 / 第百十九則・忠實にして識無きは必ず事を僨る
忠實而無才,尚可立功,心志專壹也。 忠實而無識,必至僨事,意見多偏也。
新字:忠実而無才,尚可立功,心志専壱也。 忠実而無識,必至僨事,意見多偏也。
書き下し
忠實にして才無きは、尚ほ功を立つべし、心志專壹なればなり。 忠實にして識無きは、必ず事を僨るに至る、意見偏ること多ければなり。
現代語訳
誠実だが才能のない者は、それでも功を立てることができます。心と志がひたむきだからです。誠実だが見識のない者は、必ず事を台無しにします。考えが偏っていることが多いからです。
解説
同じ誠実な人でも、才能が足りない人と見識が足りない人とでは結果が大きく違う、と説いた則です。才能が足りなくても、心がひたむきであれば、こつこつと努めて功を立てることができます。ところが見識、つまり物事を正しく見る目が足りない人は、誠実であるぶん思い込みが強く、かえって事を僨る、つまりひっくり返して台無しにします。誠実さは大切ですが、それだけでは足りず、偏りを正す見識が要るという指摘です。前半は誠実さの強み、後半はその落とし穴で、同じ忠実から正反対の結果が出るという対比が鋭いところです。今日の組織でも、真面目で熱心なのに方向を誤って周りを困らせる人がいます。熱意には、広く学んで偏りを正す努力が伴わねばなりません。
この章句が説くこと
忠実見識才能偏見修身
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