囲炉夜話 / 第百四則・錢は能く人を福し亦た能く人を禍す
錢能福人,亦能禍人,有錢者不可不知。 藥能生人,亦能殺人,用藥者不可不慎。
新字:銭能福人,亦能禍人,有銭者不可不知。 薬能生人,亦能殺人,用薬者不可不慎。
書き下し
錢は能く人を福し、亦た能く人を禍す、錢有る者は知らざるべからず。 藥は能く人を生かし、亦た能く人を殺す、藥を用ふる者は慎まざるべからず。
現代語訳
お金は人に福をもたらすこともできれば、災いをもたらすこともできます。お金を持つ者は、それを知っておかねばなりません。薬は人を生かすこともできれば、殺すこともできます。薬を使う者は、慎重でなければなりません。
解説
お金と薬という、使い方しだいで正反対の結果を生む二つのものを並べた則です。お金は人を助け、暮らしを豊かにしますが、争いを招き、心をゆがめ、身を滅ぼす元にもなります。薬も病を治しますが、量や使い方を誤れば毒になります。二つを並べることで、お金もまた薬と同じく、扱う人の知恵と慎みしだいだと気づかせる構成になっています。前の則で、財産を子孫に遺す害を説いたことともつながる考えです。今日でも、急に大金を手にした人が人生を崩すことや、便利な道具が使い方ひとつで人を傷つけることは珍しくありません。お金を持つことそのものより、それがどう働いているかを見張る目を持て、という戒めは、豊かな時代ほど大切になります。
この章句が説くこと
金銭慎重禍福勤倹処世
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