囲炉夜話 / 第百二則・知足の心は以て書を讀むべからず
求備之心,可用之以修身,不可用之以接物。 知足之心,可用之以處境,不可用之以讀書。
新字:求備之心,可用之以修身,不可用之以接物。 知足之心,可用之以処境,不可用之以読書。
書き下し
備はるを求むるの心は、之を用ひて以て身を修むべく、之を用ひて以て物に接すべからず。 足るを知るの心は、之を用ひて以て境に處すべく、之を用ひて以て書を讀むべからず。
現代語訳
完全を求める心は、自分の身を修めるのに用いるべきで、人や物に接するのに用いてはいけません。足るを知る心は、自分の境遇に対処するのに用いるべきで、書物を読むのに用いてはいけません。
解説
完全を求める心と足るを知る心という、正反対に見える二つの心の使いどころを分けた則です。求備、つまり完璧を求める心は自分を鍛えるときには役立ちますが、他人に向けると人を責めてばかりになります。論語微子篇にも、備わるを一人に求むること無かれ、という言葉があります。一方の知足は老子にも見える徳で、境遇に満足すれば心が安らぎますが、学問でそれをすると成長が止まってしまいます。二句を並べると、自分には厳しく他人には寛く、暮らしには満足し学びには満足しない、という向け先の使い分けが見えてきます。今日でも、完璧主義を部下に向けて疲れさせたり、学びの手を早々に止めたりすることがあります。同じ心でも、どこに向けるかで徳にも害にもなるのです。
この章句が説くこと
知足修身寛容読書処世
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