囲炉夜話 / 第八十九則・子弟を教へて品行を立てしむ
交朋友增體面,不如交朋友益身心。教子弟求顯榮,不如教子弟立品行。
新字:交朋友增体面,不如交朋友益身心。教子弟求顕栄,不如教子弟立品行。
書き下し
朋友に交はりて體面を增すは、朋友に交はりて身心を益するに如かず。子弟を教へて顯榮を求めしむるは、子弟を教へて品行を立てしむるに如かず。
現代語訳
友と付き合って体面を増すよりも、友と付き合って身と心を益するほうがよいのです。子弟を教えて立身出世を求めさせるよりも、子弟を教えて品行を確立させるほうがよいのです。
解説
交友と子弟教育のそれぞれについて、見栄えを求めるか中身を求めるかを対比した則です。前半は、立派な友人を持つことで世間体を良くしようとする付き合い方より、自分の身と心の成長になる付き合いを選べと言います。後半は、子に出世や名誉を求めさせるより、まず人としての品行を立てさせよと言います。どちらも体面や顕栄という外側の飾りと、身心や品行という内側の実とを比べており、著者は一貫して内側を取ります。前の益友の則とも響き合う考え方です。今日でも、人脈の広さを誇るための付き合いや、学歴や肩書きを目標にした教育は珍しくありません。けれども本当に人生を支えるのは、自分を磨いてくれる友と、どこへ行っても崩れない品行です。何のために付き合い、何のために教えるのかを問い直させてくれます。
この章句が説くこと
交友教子品行家訓修身
関連する章句
-
『囲炉夜話』第五十八則・直道の朋友と結交す能く直道の朋友と結交すれば、其の人必ず令名有り。肯て耆德老成に親近すれば、其の家必ず善事多し。
-
『囲炉夜話』第二百十九則・他の好處を留心して學ぶ朋友と交遊するには、須らく他の好處を將て留心して學び來るべし、方めて能く益を受く。 聖賢の言語に對しては、必ず我平時に照樣に行ひ去るを要す、才かに書を讀むと算す。
-
『囲炉夜話』第二十二則・其の身を正して以て之を率ゐる父兄に善行有るも、子弟之を學びて或いは肖ず。 父兄に惡行有れば、子弟之を學びて則ち肖ざる無し。 知るべし、父兄の子弟を教ふるは、必ず其の身を正して以て之を率ゐ、徒らに言詞を事とするを庸ふる無きを。 君子に過行有れば、小人之を嫉みて容るる能はず。 君子に過行無きも、小人之を嫉みて亦た容るる能はず。 知るべし、君子の小人に處するは、必ず其の氣を平らかにして以て之を待ち、稍しも激切を形はすべからざるを。
-
『囲炉夜話』第八十一則・何者をか益友と爲す何者をか益友と爲す?凡そ事に肯んじて我が過ちを規す者是れなり。 何者をか小人と爲す?凡そ事に必ず己の私に徇ふ者是れなり。
-
『囲炉夜話』第九十則・憂勤惕厲の工夫無かるべからず弟子を幼時に教ふるには、便ち應に正大光明の氣象有るべし。 身心を平日に檢するには、憂勤惕厲の工夫無かるべからず。
-
『囲炉夜話』第十六則・父兄の教育の繫る所每に子弟を待つを見るに、嚴厲なる者は、德を成すに至り易く、姑息なる者は、多く敗行有り、則ち父兄の教育の繫る所なり。 又た子弟有るを見るに、聰穎なる者の、忽ち下流に入り、庸愚なる者の、轉じて上達を為すは、則ち父兄の培植の關はる所なり。