囲炉夜話 / 第八十八則・讀書の種子を留むべし
家縱貧寒,也須留讀書種子。人雖富貴,不可忘力穡艱辛。
新字:家縦貧寒,也須留読書種子。人雖富貴,不可忘力穡艱辛。
書き下し
家縱ひ貧寒なるも、也た須らく讀書の種子を留むべし。人富貴なりと雖も、力穡の艱辛を忘るべからず。
現代語訳
家がたとえ貧しく寒々としていても、学問をする子を一人は残しておかねばなりません。人がたとえ富み栄えていても、田畑を耕す苦労を忘れてはいけません。
解説
貧しい家と富んだ家のそれぞれに、忘れてはならないものを示した則です。読書の種子とは、学問を続けて家の文化を受け継ぐ子のことで、種をまくように次の代へ学びをつなぐという比喩です。貧しいとついつい目先の稼ぎを優先しますが、学問の芽を絶やせば家は立ち直る力を失うと著者は考えます。一方の力穡は農耕に励むことで、富んでも食べ物を生み出す苦労を忘れるな、と言います。貧しい家には上を向く学びを、富む家には足元の労苦を、という形で、それぞれに欠けがちなものを補っているのが対句の妙です。今日でも、余裕のないときこそ学びへの投資を削らないこと、余裕のあるときこそ現場の苦労を忘れないことは、家庭にも会社にも当てはまります。
この章句が説くこと
読書勤倹家訓農耕学問
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