囲炉夜話 / 第八十四則・小利を見れば大功を立つること能はず
見小利,不能立大功。存私心,不能謀公事。
書き下し
小利を見れば、大功を立つること能はず。私心を存すれば、公事を謀ること能はず。
現代語訳
目先の小さな利益に目を奪われていては、大きな功績を立てることはできません。私心を抱いていては、公の事業を計ることはできません。
解説
大きな仕事を妨げる二つの障りを、短い対句で示した則です。前半は論語子路篇の、小利を見れば則ち大事成らず、という孔子の言葉とよく似た考えです。目の前の小さな得を拾い続けていると、時間と力が細かく割かれ、大きな成果に向かう道がふさがってしまいます。後半は、私心、つまり自分の損得を優先する気持ちがあると、みんなのための事業を正しく計画できないと言います。前半は視野の狭さ、後半は心の向きの偏りを戒めており、どちらも目先と自分に囚われることへの警告です。今日の組織でも、短期の数字を追うあまり長期の投資を削ったり、部署や個人の都合で全体の判断をゆがめたりすることは珍しくありません。大きな仕事ほど、小さな得と自分の得をいったん脇に置く覚悟が要るのです。
この章句が説くこと
小利私心公事大局修身
関連する章句
-
『囲炉夜話』第百九十三則・義の中に利有り義の中に利有り、而して義を尚ぶの君子は、初めより利に計り及ぶに非ざるなり。 利の中に害有り、而して利に趨るの小人は、並びに其の害為るを顧みざるなり。
-
論語・子路篇子夏、莒父の宰と為り、政を問う。子曰く、「速やかならんことを欲する無かれ、小利を見る無かれ。速やかならんことを欲すれば、則ち達せず。小利を見れば、則ち大事成らず。」
-
『臣軌』卷上 至忠章利は並ぶべからず、忠は兼ぬべからず。小利を去らざれば、則ち大利は得られず、小忠を去らざれば、則ち大忠は至らず。故に小利は大利の残なり、小忠は大忠の賊なり。
-
『囲炉夜話』第九則・人と得失を爭はず人と得失を爭はず、惟だ己に知能有らんことを求む。
-
『囲炉夜話』第二百八則・總て勢利の氣有る可からず何等の人と作るを論ずる無く、總て勢利の氣有る可からず。 何等の業を習ふを論ずる無く、總て粗浮の心有る可からず。
-
『囲炉夜話』第二百七則・君子は刑を懷ふ隱微の愆も、即ち憲典を干す、所以に君子は刑を懷ふなり。 技藝の末は、身心に益無し、所以に君子は本を務むるなり。