囲炉夜話 / 第八十二則・心を方便に存すれば即ち長者と稱す
濟世雖乏貲財,而存心方便,即稱長者。 生資雖少智慧,而慮事精詳,即是能人。
新字:済世雖乏貲財,而存心方便,即称長者。 生資雖少智慧,而慮事精詳,即是能人。
書き下し
世を濟ふに貲財に乏しと雖も、而も心を方便に存すれば、即ち長者と稱す。 生資は智慧少しと雖も、而も事を慮ること精詳なれば、即ち是れ能人なり。
現代語訳
世の人を救うのに財産が乏しくても、人の便宜をはかる心を持っていれば、それで長者と呼ばれます。生まれつきの資質に知恵が少なくても、物事を細やかに考え尽くすなら、それで有能な人です。
解説
持たざる者でも到達できる二つの境地を示し、足りないものを嘆く人を励ます則です。前半の長者は徳のある年長者、人望のある人を言い、ふつうは財力で人を助ける人を思い浮かべます。しかし著者は、金がなくても方便、つまり人の都合を思いやり手助けする心があれば長者だと言います。後半は、才知に恵まれなくても、考えを細かく詳しく巡らせれば有能な人になれると言います。どちらも、元手ではなく心がけと手間で補えるという点で一対になっています。今日でも、予算がないから人を助けられない、頭が良くないから仕事ができない、と考えがちです。けれども、ちょっとした気配りや、丁寧な下調べで補えることは多くあります。持っていないものではなく、持っている心と時間の使い方に目を向けさせてくれます。
この章句が説くこと
長者方便精詳勤勉処世
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