囲炉夜話 / 第五十七則・克く勤め克く儉にして先人に負く毋れ
念祖考創家基,不知風霜沭雨,受多少苦辛,才能足食足衣,以貽後世。 為子孫計長久,除卻讀書耕田,恐別無生活,總期克勤克儉,毋負先人。
新字:念祖考創家基,不知風霜沭雨,受多少苦辛,才能足食足衣,以貽後世。 為子孫計長久,除却読書耕田,恐別無生活,総期克勤克倹,毋負先人。
書き下し
祖考の家基を創むるを念へば、知らず風霜沭雨、多少の苦辛を受けて、才かに能く食に足り衣に足りて、以て後世に貽せしかを。 子孫の為に長久を計るに、讀書耕田を除卻すれば、恐らくは別に生活無し、總て克く勤め克く儉にして、先人に負く毋からんことを期す。
現代語訳
祖父や亡き父が家の基礎を築いたことを思うと、風や霜にさらされ雨に濡れて、どれほどの苦労をしてようやく衣食を足らせ、後の世に残してくれたことか分かりません。子孫のために長く続く道を考えるなら、書を読むことと田を耕すことを除いては、おそらくほかに生きる道はありません。何よりも、よく勤めよく倹約して、先人の恩に背かないことを願います。
解説
先祖の苦労を思い、子孫の行く末を考える、家訓らしい一則です。祖考は祖父と亡き父、広く先祖のことです。風霜沐雨は風や霜に耐え雨に濡れる苦労のことで、原文の沭は沐の誤りと見られます。今ある衣食は、先人が苦労して築いたものだと子に思い起こさせます。後半は、子孫が長く続く道は読書と耕田しかないとし、克勤克倹、よく勤めよく倹約することを求めます。克勤克倹は『尚書』大禹謨の語に基づきます。受け継いだものを当たり前と思わず、それを築いた苦労を想像すること、そして自分も勤倹で次に渡すことが、家を続ける心得だと教えています。
この章句が説くこと
勤倹家訓祖先読書孝
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