囲炉夜話 / 第三十六則・財は以て己を累はすに足る
德足以感人,而以有德當大權,其感尤速。 財足以累己,而以有財處亂世,其累尤深。
新字:徳足以感人,而以有徳当大権,其感尤速。 財足以累己,而以有財処乱世,其累尤深。
書き下し
德は以て人を感ぜしむるに足る、而して德有るを以て大權に當たれば、其の感ずること尤も速やかなり。 財は以て己を累はすに足る、而して財有るを以て亂世に處れば、其の累はすこと尤も深し。
現代語訳
徳は人を感化するのに十分な力があります。そして徳のある人が大きな権限の座に就けば、その感化はいっそう速く広がります。財産は自分をわずらわせるのに十分な力があります。そして財産を持って乱世に身を置けば、そのわずらいはいっそう深くなります。
解説
徳と財が、置かれた状況によって力を増すことを対比した対句です。徳はそれだけでも人を動かしますが、大きな権限と結びつくと影響が一気に広がると言います。逆に財産は、それだけでも持ち主の心配の種になりますが、乱世では狙われる理由となり、わずらいがいっそう深くなります。累は、わずらわせる、巻き添えにするという意味です。同じ持つでも、徳は人のために働き、財は持ち主を縛りうるという違いが浮かび上がります。地位を得たときは自分の人柄がより強く周りに映ることを、財を得たときはそれが重荷にもなることを、心得ておきたいものです。
この章句が説くこと
徳財権力感化処世
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