囲炉夜話 / 第三十一則・平淡にして奇無し
凡人世險奇之事,決不可為。 或為之而幸獲其利,特偶然耳,不可視為常然也。 可以為常者,必其平淡無奇,如耕田讀書之類是也。
新字:凡人世険奇之事,決不可為。 或為之而幸獲其利,特偶然耳,不可視為常然也。 可以為常者,必其平淡無奇,如耕田読書之類是也。
書き下し
凡そ人世の險奇の事は、決して為すべからず。 或いは之を為して幸ひに其の利を獲るも、特だ偶然なるのみ、視て常然と為すべからざるなり。 以て常と為すべき者は、必ず其の平淡にして奇無きもの、田を耕し書を讀むの類の如き是れなり。
現代語訳
世の中の危うく奇抜なことは、決してしてはいけません。たまたまそれをして運よく利益を得ても、それはただの偶然にすぎず、いつもそうなると思ってはいけません。常の道とすべきものは、必ず平凡で淡々として奇抜さのないもの、たとえば田を耕し書を読むといった類のことです。
解説
一発逆転を狙う危うい道を戒め、平凡な営みを常道とする一則です。険奇は、危険で奇抜なことです。たまたま成功した例があっても、それは偶然にすぎず、再現できる方法ではないと言います。成功した人の話を聞くと自分もと思いがちですが、同じ賭けに負けた多くの人は語られません。常とすべきは、耕田読書、すなわち毎日の仕事と学びのような、目立たないが確実に積み上がることです。農人を名乗る著者らしい価値観です。投機的な話に心が動くとき、それを毎年繰り返せるかと問えば、この則の言う常と偶然の違いが見えてきます。
この章句が説くこと
平淡読書勤勉投機処世
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