囲炉夜話 / 第二十八則・忍讓曲全して舊歡を失ふ勿れ
凡遇事物突來,必熟思審處,恐貽後悔。 不幸家庭釁起,須忍讓曲全,勿失舊歡。
新字:凡遇事物突来,必熟思審処,恐貽後悔。 不幸家庭釁起,須忍譲曲全,勿失旧歓。
書き下し
凡そ事物の突として來るに遇はば、必ず熟思して審らかに處せよ、後悔を貽すを恐る。 不幸にして家庭に釁起こらば、須らく忍讓曲全して、舊歡を失ふ勿れ。
現代語訳
何事であれ不意に物事が起こったときは、必ずよく考えて慎重に処置しなさい。後で悔いを残すおそれがあるからです。不幸にも家庭に争いの種が生じたときは、こらえて譲り、曲げてでも全うして、昔からのむつまじさを失わないようにしなさい。
解説
突発事への対処と、家庭内のもめごとへの対処を並べた対句です。前半は、急な出来事ほど即断せず、熟考して処置せよと言います。後悔を残さないためです。後半の釁は、仲たがいのきっかけとなるすきまのことです。家庭で争いが起きたら、忍んで譲り、多少曲げてでも全体を保って、旧来の和を失うなと説きます。曲全は『老子』の「曲なれば則ち全し」を思わせる語です。ここでの忍譲は、家族の和を守るために意地を張らないことで、暴力や理不尽を我慢せよという意味ではありません。身近な人ほど、一時の勝ち負けより長い関係を優先したいものです。
この章句が説くこと
忍家庭熟慮和寛容
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