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抱朴子外篇 / 自敘

開國初,侯之弟文,隨侯征討,屢有大捷。侯比上書為文訟功,而官以文私從兄行,無軍名,遂不為論。侯曰:「弟與我同冒矢石,瘡痍週身,傷失右眼,不得尺寸之報。吾乃重金累紫,何心以安?」乃自表選取轉封於弟。書上請報,漢朝欲成君高義,故特聽焉。文辭,不獲已。受爵即第,為驃騎營立宅舍於博望裏。於今基兆石礎存焉。又分割租秩以供奉吏士,給如二君焉。驃騎殷勤止之而不從。驃騎曰:「此更煩役國人,何以為讓?」乃托他行,遂南渡江而家於句容。子弟躬耕,以典籍自娛。文累使奉迎驃騎,驃騎終不還。又令人守護博望宅舍,以冀驃騎之反,至於累世無居之者。

新字:開国初,侯之弟文,随侯征討,屡有大捷。侯比上書為文訟功,而官以文私従兄行,無軍名,遂不為論。侯曰:「弟与我同冒矢石,瘡痍週身,傷失右眼,不得尺寸之報。吾乃重金累紫,何心以安?」乃自表選取転封於弟。書上請報,漢朝欲成君高義,故特聴焉。文辞,不獲已。受爵即第,為驃騎営立宅舎於博望裏。於今基兆石礎存焉。又分割租秩以供奉吏士,給如二君焉。驃騎殷勤止之而不従。驃騎曰:「此更煩役国人,何以為譲?」乃托他行,遂南渡江而家於句容。子弟躬耕,以典籍自娯。文累使奉迎驃騎,驃騎終不還。又令人守護博望宅舎,以冀驃騎之反,至於累世無居之者。

書き下し

開国の初め、侯の弟の文、侯に随いて征討し、屢しば大捷有り。侯は比しば書を上りて文の為に功を訟うるも、官は文の私に兄に従いて行き、軍名無きを以て、遂に論ぜず。侯曰く、「弟は我と同じく矢石を冒し、瘡痍は周身にして、傷つきて右眼を失い、尺寸の報も得ず。吾は乃ち金を重ね紫を累ぬ、何の心か以て安んぜん」と。乃ち自ら表して転封を選び取りて弟に与えんとす。書上りて報を請い、漢朝は君の高義を成さんと欲し、故に特に聴す。文は辞するも、已むを獲ず。爵を受けて第に即き、驃騎の為に宅舎を博望里に営立す。今に於いて基兆・石礎は存す。又た租秩を分割して以て奉吏士に供え、二君の如く給す。驃騎は殷勤に之を止むれども従わず。驃騎曰く、「此れ更に国人を煩役す、何を以て譲と為さん」と。乃ち他行に托し、遂に南のかた江を渡りて句容に家す。子弟は躬ら耕し、典籍を以て自ら娯しむ。文は累しば使いをして驃騎を奉迎せしむるも、驃騎は終に還らず。又た人をして博望の宅舎を守護せしめ、以て驃騎の反るを冀うも、累世に至るまで居る者無し。

現代語訳

建国のはじめ、侯の弟の文は、侯に随って征討し、しばしば大勝を収めた。侯はたびたび書を奉って文のために功を訴えたが、官は、文が私的に兄に従って行ったもので軍の名籍がないとして、結局取り上げなかった。侯は言った。「弟は私と同じく矢石を冒し、傷が全身にわたり、負傷して右眼を失ったのに、わずかな報いも得ていない。私は金や紫の印綬を重ねている。どうして安んじていられようか」と。そこで自ら上表して、自分の封地を転封して弟に与えたいと願った。書を上ってその裁可を請い、漢の朝廷は侯の高い義を成し遂げさせようとして、特に許した。文は辞退したがやむを得なかった。爵を受けて邸に入り、驃騎のために屋敷を博望里に造った。今もその基礎や礎石が残っている。また租税の収入を分けて吏士の給与に充て、二君と同様に与えた。驃騎は丁寧にこれを止めたが従わなかった。驃騎は言った。「これは国の人をさらに煩わせる。どうして譲ったことになろうか」と。そこで他所へ行くことに托し、南へ長江を渡って句容に家を構えた。子弟は自ら耕し、典籍で楽しんだ。文はたびたび使者を遣わして驃騎を迎えようとしたが、驃騎はついに帰らなかった。また人に博望の屋敷を守らせて驃騎が戻るのを願ったが、何世代経っても住む者はなかった。

解説

先祖の驃騎が、軍功を認められなかった弟の文のために自分の封地を譲ろうとした逸話です。書かれている「吾は乃ち金を重ね紫を累ぬ、何の心か以て安んぜん」は、自分だけが報われる状況に居心地の悪さを覚える感覚です。朝廷が許した後も、弟が屋敷を建てて人を養おうとすることが国人の負担になると見て、江南へ移ります。譲る側の潔さと、譲られた側の誠意の対比が読みどころです。成果を分け合う場面で、自分が受け取り過ぎていないかを考える材料になりますが、原文は先祖の伝承であり、史実の細部は断定できません。

この章句が説くこと

何の心か以て安んぜん君の高義を成さんと欲し江を渡りて句容に家す子弟は躬ら耕し譲る功

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