林子平学則 / 八德・孝・悌・忠・信と勇の入口
一孝悌忠信勇義廉耻の八字能く心に記すべし、一孝は親に仕る道なり、親に對して不敬不作法の言葉なく、不敬不作法の所業なく、其身の行作正直にして、親の心を安堵せしむる事なり、一悌は兄を敬ひ、弟を愛する道にして、且つ長者に順ふ道なり、兄は云に及ばず、己れより年の增さりたる人をば兄同樣に敬ひて能く順ふを云ふ、順とは行住坐臥飲食等に至迄、禮讓を忘れずして順道を守る事なり、又年減ずる人を弟同樣に見る事なり、一忠は君に仕る道にして、且つ朋友に交るに僞なく信義を以てする事なり、己れを盡すを忠といふ、君に事へて死するも、己れを盡すなり、朋友に信あるも、己れを盡すなり、故に士は己れを知るものゝ爲めに死すと云へり、都て忠なり、一信は每事に虛事虛言なく、實事を以て旨とする事なり、上天子より下庶人まで信あれば人服し、信なければ人背く、貴賤となく信を失ふ事なかれ、一勇は義の相手にて勝氣の事なり、
新字:一孝悌忠信勇義廉耻の八字能く心に記すべし、一孝は親に仕る道なり、親に対して不敬不作法の言葉なく、不敬不作法の所業なく、其身の行作正直にして、親の心を安堵せしむる事なり、一悌は兄を敬ひ、弟を愛する道にして、且つ長者に順ふ道なり、兄は云に及ばず、己れより年の增さりたる人をば兄同様に敬ひて能く順ふを云ふ、順とは行住坐臥飲食等に至迄、礼譲を忘れずして順道を守る事なり、又年減ずる人を弟同様に見る事なり、一忠は君に仕る道にして、且つ朋友に交るに偽なく信義を以てする事なり、己れを尽すを忠といふ、君に事へて死するも、己れを尽すなり、朋友に信あるも、己れを尽すなり、故に士は己れを知るものゝ為めに死すと云へり、都て忠なり、一信は毎事に虚事虚言なく、実事を以て旨とする事なり、上天子より下庶人まで信あれば人服し、信なければ人背く、貴賤となく信を失ふ事なかれ、一勇は義の相手にて勝気の事なり、
書き下し
一孝悌忠信勇義廉耻の八字能く心に記すべし、一孝は親に仕る道なり、親に對して不敬不作法の言葉なく、不敬不作法の所業なく、其身の行作正直にして、親の心を安堵せしむる事なり、一悌は兄を敬ひ、弟を愛する道にして、且つ長者に順ふ道なり、兄は云に及ばず、己れより年の增さりたる人をば兄同樣に敬ひて能く順ふを云ふ、順とは行住坐臥飲食等に至迄、禮讓を忘れずして順道を守る事なり、又年減ずる人を弟同樣に見る事なり、一忠は君に仕る道にして、且つ朋友に交るに僞なく信義を以てする事なり、己れを盡すを忠といふ、君に事へて死するも、己れを盡すなり、朋友に信あるも、己れを盡すなり、故に士は己れを知るものゝ爲めに死すと云へり、都て忠なり、一信は每事に虛事虛言なく、實事を以て旨とする事なり、上天子より下庶人まで信あれば人服し、信なければ人背く、貴賤となく信を失ふ事なかれ、一勇は義の相手にて勝氣の事なり、
現代語訳
一つ、孝・悌・忠・信・勇・義・廉・耻の八字をよく心に記すべきです。一つ、孝は親に仕える道です。親に対して不敬・無作法の言葉がなく、不敬・無作法な行いがなく、その身の行いが正直で、親の心を安堵させることです。一つ、悌は兄を敬い弟を愛する道で、また年長者に従う道です。兄は言うまでもなく、自分より年上の人を兄と同様に敬ってよく従うことを言います。順とは、行住坐臥、飲食などに至るまで、礼譲を忘れず、順の道を守ることです。また年下の人を弟と同様に見ることです。一つ、忠は君に仕える道で、また朋友に交わるのに偽りなく信義をもってすることです。己を尽くすことを忠といいます。君に仕えて死ぬのも己を尽くすことであり、朋友に信があるのも己を尽くすことです。ゆえに、士は己を知る者のために死すと言われました。すべて忠です。一つ、信は何事にも虚事・虚言なく、実事をもって旨とすることです。上は天子から下は庶民まで、信があれば人は服し、信がなければ人は背きます。貴賤を問わず信を失ってはなりません。一つ、勇は義の相手で、勝気(負けぬ気)のことです。
解説

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本の中身を見るこの章句が説くこと
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