葉隠 / 聞書第十一
敵城の強弱見様、煙霞春山を見るが如く、雨後晴天を見るが如しといへり。澄みわたるは弱なり。
書き下し
敵城(てきじょう)の強弱見様、煙霞(えんか)春山を見るが如く、雨後晴天を見るが如しといえり。澄みわたるは弱なり。
現代語訳
敵の強弱の見分け方について。雨あがりの晴天のように澄みわたって見えるのは、弱いしるしである。敵の城の強弱の見分け方は、かすみのかかった春の山を見るようであり、また雨あがりの晴天を見るようであるという。澄みわたって見えるのは弱いのだ。
解説
敵城やその軍勢の強弱を、その場に漂う気配や様子から見分けるという、古い兵法の観察術を説いた条です。かすみに包まれた春山のように奥深く見えるものは強く、雨あがりの空のように澄みわたって隅々まで見通せるものは弱い、といいます。核にあるのは「表に現れた気配から内実を読む」という洞察の姿勢でしょう。もとより神秘的で経験に頼る見立てであり、そのまま真に受けるものではありませんが、相手の張りつめた緊張感や底知れなさを感じ取る、という直観の働きは現代の交渉や観察にも通じます。人や組織の「見え方」から力量を推し量る一つの視点として読めます。
この章句が説くこと
葉隠兵法観察洞察敵情直観
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・應務・一葉を觀て樹の死生を知る一葉を觀て樹の死生を知り、一面を觀て人の病否を知り、一言を現て識の是非を知り、一事を現て心の邪正を知る。
-
人物志・八觀夫れ似たるを察して非なるを明らかにし、情の反を御するは、訟を理むるに似たる有り、其の実は別ち難きなり。
-
『鬼谷子』揣篇情を揣る者は、必ず其の甚だ喜ぶの時を以て、往きて其の欲を極む。其の欲有るや、其の情を隱す能わず。必ず其の甚だ懼るるの時を以て、往きて其の惡む所を極む。其の惡む有るや、其の情を隱す能わず。情欲は必ず其の變に出づ。
-
『鬼谷子』反応篇古の大化する者は、乃ち無形と俱に生ず。反りて以て往を觀、覆して以て來を驗す。反りて以て古を知り、覆して以て今を知る。反りて以て彼を知り、覆して以て此を知る。動靜虛實の理、今に合わざれば、古に反りて之を求む。事に反りて覆を得る者有るは、聖人の意なり、察せざるべからず。
-
『鬼谷子』揣篇故に先王の道、聖智の謀有りと雖も、情を揣り隱匿するに非ざれば、之を索むる所無し。此れ謀の大本なり、而して說の法なり。常に人に事有り、人能く先んずる莫し。事に先んじて生ずるは、此れ最も爲し難し。故に曰く、情を揣るは最も守り司り難し。言は必ず其の謀慮に時するなり。故に蜎の飛び蠕の動くを觀るに、利害有らざる無し。以て事の美を生ずべし。事を生ずる者は、幾の勢なり。此れ情を揣り言を飾り、文章を成して而して後に之を論ず。
-
『鬼谷子』揣篇感動して其の變を知らざる者は、乃ち且く其の人を錯きて、與に語る勿かれ。而して更めて親しむ所を問い、其の安んずる所を知る。夫れ情の内に變ずる者は、形外に見る。故に常に必ず其の見わるる者を以て其の隱るる者を知る。此れ深きを測り情を探ると謂う所以なり。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る