鬼谷子 / 揣篇
故雖有先王之道、聖智之謀、非揣情隱匿、無所索之、此謀之大本也、而說之法也。常有事於人、人莫能先先事而生、此最難爲。故曰:揣情最難守司、言必時其謀慮。故觀蜎飛蠕動、無不有利害、可以生事美。生事者、幾之勢也。此揣情飾言、成文章而後論之。
新字:故雖有先王之道、聖智之謀、非揣情隠匿、無所索之、此謀之大本也、而説之法也。常有事於人、人莫能先先事而生、此最難為。故曰:揣情最難守司、言必時其謀慮。故観蜎飛蠕動、無不有利害、可以生事美。生事者、幾之勢也。此揣情飾言、成文章而後論之。
書き下し
故に先王の道、聖智の謀有りと雖も、情を揣り隱匿するに非ざれば、之を索むる所無し。此れ謀の大本なり、而して說の法なり。常に人に事有り、人能く先んずる莫し。事に先んじて生ずるは、此れ最も爲し難し。故に曰く、情を揣るは最も守り司り難し。言は必ず其の謀慮に時するなり。故に蜎の飛び蠕の動くを觀るに、利害有らざる無し。以て事の美を生ずべし。事を生ずる者は、幾の勢なり。此れ情を揣り言を飾り、文章を成して而して後に之を論ず。
現代語訳
だから、先王の道があり、聖人の知恵ある謀りがあったとしても、実情を推し量って隠されたものをつかむのでなければ、それを求める手がかりがない。これが謀りごとの大もとであり、説くことの法である。常に人には事が起こるが、誰もそれに先んじることはできない。事が起こる前にそれを生み出すことは、最も難しい。だから言う、実情を推し量ることは最も守りつかさどりがたい、と。言葉は必ずその謀りの時機に合わせる。だから、小さな虫が飛び、うごめくものが動くのを観ても、利害のないものはない。それによって事の美しさを生み出せる。事を生み出すのは、きざしの勢いである。こうして実情を推し量り言葉を飾り、文章を整えたうえで、そのあとで論じるのである。
解説
揣篇の結びは、難しさの告白です。実情を推し量ることは「最も守り司り難し」——最も維持しにくい。一度できても、続けるのが難しい。理由は分かります。相手も状況も動き続けるので、昨日の推量は今日通用しません。そして「事に先んじて生ずるは、最も爲し難し」——起こる前に手を打つのが最も難しい、と。抵巇篇のきざしの話とつながります。小さな虫の動きにも利害がある、という一句は、観察の細かさを言っています。大きな動きを待っていては、先んじることはできません。
この章句が説くこと
情を揣るは最も守り司り難し事に先んじて生ずるは最も為し難し観察先手洞察継続
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