葉隠 / 聞書第十一
前にて兵の多少に依らず、究竟の士五六人を合はせ槍を入るれば、一方突崩すものなりと、沙汰これあり候由。
書き下し
前にて兵の多少に依らず、究竟の士五六人を合はせ槍を入るれば、一方突崩すものなりと、沙汰(さた)これあり候由。
現代語訳
腕利きの武士が五、六人心を合わせて槍を突き入れれば、敵の一方を突き崩せる。先陣では兵の多い少ないによらず、すぐれた武士五、六人が心を一つにして槍を入れれば、敵の一角を突き崩すものだ、という評判があったそうだ。
解説
戦において、数の多さより少数精鋭の結束が勝負を決する、という戦術上の知恵を伝える一条です。腕の立つ武士がわずか五、六人でも、心を一つに合わせて突き入れれば、大軍の一角を崩せると説きます。核心は「心を合はせて」という点にあり、単に技量が高いだけでなく、志と呼吸を揃えた連携こそが力を生むという発想です。現代の組織やチームにも通じる普遍性があり、規模の大きさに頼るより、少数でも目的意識を共有した集団のほうが突破力を持つ、という示唆を与えます。一点に力を集中させれば全体を動かせる、という点でも学ぶところの多い教えです。
この章句が説くこと
葉隠少数精鋭結束連携槍突破力
関連する章句
-
『韓非子』飾邪第十九治の数に明らかならば、則ち國は小なりと雖も富み、賞罰、敬信ならば、民寡しと雖も強し。
-
呉子・応変篇武侯問いて曰く、左右に高山あり、地甚だ狭迫にして、卒かに敵人に遇い、之を撃たんとするも敢えてせず、之を去らんとするも得ず、之を奈何せん、と。起対えて曰く、此を谷戦と謂う。衆しと雖も用いられず。吾が材士を募りて敵と相当たらしめ、輕足利兵を以て前行と為す。車を分ち騎を列ねて四旁に隠し、相去ること数里、其の兵を見わすこと無くば、敵必ず陳を堅くし、進退敢えてせず。是に於て旌を出し旆を列ね、行きて山外に出でて之に営せば、敵人必ず懼れん。車騎もて之に挑み、休むを得しむること勿かれ。此れ谷戦の法なり、と。
-
易経・損卦事を已めて遄やかに往くとは、上(かみ)と志を合するなり。九二の貞に利ありとは、中以て志と為すなり。一人行くとは、三なれば則ち疑はるるなり。其の疾を損すとは、亦喜ぶべきなり。六五の元吉は、上より佑(たす)くればなり。損せずして之を益すとは、大いに志を得るなり。
-
司馬法・仁本患いを同じくし利を同じくして以て諸侯を合し、小に比(した)しみ大に事(つか)えて以て諸侯を和す。
-
孫子・九地篇所謂る古の善く兵を用うる者は、能く敵人をして前後相及ばず、衆寡相恃まず、貴賤相救わず、上下相収めず、卒離れて集まらず、兵合して斉わざらしむ。
-
呉子・図国篇武侯問いて曰く、「願わくは兵を治め、人を料り、国を固むるの道を聞かん」と。起対えて曰く、「古の明王は、必ず君臣の礼を謹み、上下の儀を飾り、吏民を安集し、俗に順いて教え、良材を簡び募りて、以て不虞に備う。昔、斉の桓公は士五万を募りて、以て諸侯に霸たり。晋の文公は召して前行と為すこと四万、以て其の志を獲たり。秦の繆公は陥陳三万を置きて、以て鄰敵を服せしむ。故に強国の君は、必ず其の民を料る。民に胆勇気力有る者は、聚めて一卒と為す。進みて戦い力を効し、以て其の忠勇を顕すを楽しむ者は、聚めて一卒と為す。能く高きを踰え遠きを超え、足軽くして善く走る者は、聚めて一卒と為す。王臣にして位を失い、功を上に見さんと欲する者は、聚めて一卒と為す。城を棄て守りを去り、其の醜を除かんと欲する者は、聚めて一卒と為す。此の五者は、軍の練鋭なり。此の三千人有らば、内より出でては以て囲みを決すべく、外より入りては以て城を屠るべし」と。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る