葉隠 / 聞書第十一
軍中防禦様の事。菱など撒いても敵に疑はれ、計略も度々すれば疑出來るなり。菱など一表蒔きても、敵疑を起すものなり。落穴其外も同前。
新字:軍中防禦様の事。菱など撒いても敵に疑はれ、計略も度々すれば疑出来るなり。菱など一表蒔きても、敵疑を起すものなり。落穴其外も同前。
書き下し
軍中防禦様(ぐんちゅうぼうぎょよう)の事。菱(ひし)など撒いても敵に疑はれ、計略も度々(たびたび)すれば疑(うたがい)出来(いでき)るなり。菱など一表(いっぴょう)蒔(ま)きても、敵疑を起すものなり。落穴(おとしあな)其外(そのほか)も同前(どうぜん)。
現代語訳
陣中での防御の心得について。菱(ひし)を撒いても敵に疑われるし、計略も度々仕掛ければ怪しまれるものだ。菱を一俵ばかり撒いただけでも、敵は疑いを起こすものである。落とし穴やその他の仕掛けも同様だ。
解説
戦場での防御の仕掛けについて説いた一条です。菱を撒く、落とし穴を掘るといった計略は有効な手立てですが、頻繁に使えばかえって敵に警戒され、見破られてしまうと戒めます。策は多用すれば効き目を失い、相手の疑心を招くという逆説を突いた実務的な教訓です。奇策や仕掛けは、ここぞという一度に賭けてこそ生きるのであり、常用すれば読まれてしまう。これは戦場に限らず、交渉や競争の場でも、同じ手を繰り返せば相手に対策されるという普遍的な知恵につながります。策に頼りすぎることの危うさを教える言葉といえます。
この章句が説くこと
葉隠兵法防御計略奇策警戒