葉隠 / 聞書第一
物頭などは、組衆に親切にあるべき事なり。中野數馬(利明)大役にて、隙これなく候。然れども組衆病氣か、何事ぞこれある時は、御城より歸りに、毎日見舞ひ申し候。それ故、組中思附き候なり。
新字:物頭などは、組衆に親切にあるべき事なり。中野数馬(利明)大役にて、隙これなく候。然れども組衆病気か、何事ぞこれある時は、御城より帰りに、毎日見舞ひ申し候。それ故、組中思附き候なり。
書き下し
物頭(ものがしら)などは、組衆に親切にあるべき事なり。中野数馬(利明)大役にて、隙(ひま)これなく候。然れども組衆病気か、何事ぞこれある時は、御城より帰りに、毎日見舞ひ申し候。それ故、組中思ひ付き候なり。
現代語訳
部隊長などは、配下の者に親切であるべきだ。中野数馬(利明)は大役にあって暇もなかった。それでも配下が病気になるなど何事かあるときは、城からの帰りに毎日見舞われた。だからこそ、組中の者が(数馬に)心を寄せ従ったのである。
解説
物頭(部隊長)たる者は配下に親切であるべきだ、として中野数馬(利明)の例を挙げる一条です。数馬は大役で暇もなかったが、配下が病気になるなど何かあれば、城からの帰りに毎日見舞った。だからこそ組中の者が心から従った、と結びます。忙しさを理由にせず、部下一人ひとりの事情に細やかに気を配る姿勢が、信頼と結束を生むことを具体的に示しています。葉隠には、上に立つ者は言葉をよくかけ、人を大切にせよという教えが繰り返し現れます。現代のリーダーにもそのまま通じる話で、地位や成果よりも、困ったときにそばにいてくれるかどうかが、人の心をつかむのだと教えてくれます。
この章句が説くこと
リーダーシップ部下への配慮親切信頼と結束忙しさと気配り人を大切にする
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