葉隠 / 聞書第一
戰場にては、人に先を越されじと思ひ、敵陣を打破り度しとのみ心掛くる時、人におくれず、心氣たけくなり、武勇を顯す由、古老申し傳へ候なり。死骸は敵に向きて居るやうにと覺悟すべきなり。
新字:戦場にては、人に先を越されじと思ひ、敵陣を打破り度しとのみ心掛くる時、人におくれず、心気たけくなり、武勇を顕す由、古老申し伝へ候なり。死骸は敵に向きて居るやうにと覚悟すべきなり。
書き下し
戦場にては、人に先を越されじと思ひ、敵陣を打ち破り度(た)しとのみ心掛くる時、人におくれず、心気(しんき)たけくなり、武勇を顕す由(よし)、古老(ころう)申し伝へ候なり。死骸(しがい)は敵に向きて居るやうにと覚悟すべきなり。
現代語訳
戦場では、人に先を越されまいと思い、敵陣を打ち破りたいとだけ心がけているとき、人に後れを取らず、気力が勇み立って、武勇をあらわすものだと、古老が語り伝えている。(討ち死にするなら)その死骸は敵のほうを向いているように、と覚悟しておくべきである。
解説
前へ進む一心が力を引き出す、と説いた一節です。戦場では「人に後れまい、敵陣を破りたい」とただ一つのことに集中しているとき、自然と気力が勇み立ち、武勇があらわれると古老の言葉を伝えます。さらに、たとえ倒れても死骸が敵の方を向いているように、と徹底した前進の覚悟を示します。迷いや計算を捨て、目標だけに心を向ける集中力の大切さを語っているのです。現代でも、あれこれ気に病むより「まず前へ」と一点に集中したほうが、かえって力が出て結果につながる場面は多いでしょう。退かない構えを自分の内に定めることの価値を教えてくれます。
この章句が説くこと
前進一点集中気力退かない覚悟迷いを捨てる攻めの姿勢
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