葉隠 / 聞書第一
少し智慧ある者は、當代を諷するものなり。災の基なり。口をたしなむ者は、善世には用ひられ、惡世には刑戮をまぬかる〳〵ものなり。
新字:少し智慧ある者は、当代を諷するものなり。災の基なり。口をたしなむ者は、善世には用ひられ、悪世には刑戮をまぬかる〳〵ものなり。
書き下し
少(すこ)し智慧(ちえ)ある者(もの)は、当代(とうだい)を諷(ふう)する(皮肉る)ものなり。災(わざわ)いの基(もと)なり。口(くち)をたしなむ者(もの)は、善世(ぜんせ)には用(もち)いられ、悪世(あくせ)には刑戮(けいりく)をまぬかるるものなり。
現代語訳
少し知恵のある者は、その時代や為政者を皮肉りたがるものだ。それが災いの元である。口を慎む者は、良い世では用いられ、悪い世でも刑罰・処刑を免れるものだ。
解説
少し知恵のある者ほど、その時代や為政者を皮肉りたがる。それが災いの元だ、と戒める一節です。口を慎む者は、良い世では用いられ、悪い世でも刑罰を免れる、と説きます。背景には、失言が命取りになりかねない封建社会の現実があります。批判や風刺は鋭さの証のようでいて、身を滅ぼす種にもなるという冷静な処世観です。現代でも、うかつな一言が信用や立場を損なうことは珍しくありません。言論の自由がある今は前提が違いますが、口の軽さが自分に返ってくる点は変わりません。賢さを皮肉に費やさず、言葉を慎む分別の大切さと読めるでしょう。
この章句が説くこと
口を慎む失言の戒め処世風刺の危うさ言葉の分別身を守る
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