葉隠 / 聞書第一
義經軍歌に、「大將は人に言葉を能くかけよ。」とあり。組被官にても自然の時は申すに及ばず、平生にも、「さても能く仕たり、爰を一つ働き候へ、曲者かな。」と申し候時、身の命を惜しまぬものなり。兎角一言が大事のものなり。
新字:義経軍歌に、「大将は人に言葉を能くかけよ。」とあり。組被官にても自然の時は申すに及ばず、平生にも、「さても能く仕たり、爰を一つ働き候へ、曲者かな。」と申し候時、身の命を惜しまぬものなり。兎角一言が大事のものなり。
書き下し
義経軍歌(よしつねぐんか)に、「大将(たいしょう)は人(ひと)に言葉(ことば)を能(よ)くかけよ」とあり。組被官(くみひかん)にても自然(しぜん)の時(とき)は申(もう)すに及(およ)ばず、平生(へいぜい)にも、「さても能(よ)く仕(し)たり、ここを一(ひと)つ働(はたら)き候(そうら)え、曲者(くせもの)かな(見事なやつだ)」と申(もう)し候(そうろう)時(とき)、身(み)の命(いのち)を惜(お)しまぬものなり。とかく一言(ひとこと)が大事(だいじ)のものなり。
現代語訳
義経の軍歌に、「大将は部下によく言葉をかけよ」とある。自分の配下にも、いざという時は言うまでもなく、平生から「よくやった、ここを一つ働いてくれ、見事なやつだ」と声をかければ、彼らは命さえ惜しまなくなるものだ。とにかく、ひとことの言葉が大事なのである。
解説
義経の軍歌にある「大将は部下によく言葉をかけよ」を引いた一節です。自分の配下には、いざという時は言うまでもなく、平生から「よくやった、ここを一つ働いてくれ、見事だ」と声をかければ、彼らは命さえ惜しまなくなる、と説きます。ひとことの言葉がそれほど大事だ、と。背景には、恩と情で結ばれる主従関係があり、上に立つ者の一言が士気を左右しました。現代のリーダーシップにも直結する教えです。承認や労いの言葉は、時に金銭以上に人を動かします。ふだんの声かけを惜しまないことが、部下の力を最大限に引き出す鍵になる、と読めるでしょう。
この章句が説くこと
言葉かけ承認リーダーシップ士気部下を動かす恩と情
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