葉隠 / 聞書第一
火急の場にて、人に相談もならざる時、分別の仕樣は、四誓願に押當て見れば、其の儘わかるなり。立越えたる事は、いらぬなり。
新字:火急の場にて、人に相談もならざる時、分別の仕様は、四誓願に押当て見れば、其の儘わかるなり。立越えたる事は、いらぬなり。
書き下し
火急(かきゅう)の場にて、人に相談もならざる時、分別(ふんべつ)の仕様(しよう)は、四誓願(しせいがん)に押当(おしあ)てて見れば、その儘(まま)わかるなり。立越(たちこ)えたる事は、いらぬなり。
現代語訳
差し迫った急場で、人に相談もできないとき、判断の仕方は、四誓願に照らし合わせてみれば、そのまま答えが分かる。それ以上に度を越えた小難しい思案は要らない。
解説
急場での判断のよりどころを示した短い一節です。「四誓願」とは葉隠に説かれる武士の四つの誓い(武士道に後れを取らぬこと、主君の御用に立つこと、親に孝行すること、大慈悲を起こし人のためになること)を指します。人に相談する余裕のない切迫した場面では、この四つの基準に自分の考えを照らせば、おのずと進むべき道が見える、というのです。あれこれ度を越えて考え込む必要はない、と言い添えます。ふだんから確固たる判断軸を持っていれば、いざという時に迷わず決断できる、という実践的な知恵です。現代でも、自分の価値観や行動指針を平素から定めておくことで、緊急時に素早くぶれない判断ができるでしょう。判断の速さは、事前に据えた軸から生まれます。
この章句が説くこと
判断軸四誓願即断価値基準迷わない決断平素の備え