言志四録 / 言志耋録 第四十三条 飲食を菲くするは先務
衣食住。竝不可欠。而人欲亦在此。又其甚者食也。故菲飮食。尤爲先務。
新字:衣食住。並不可欠。而人欲亦在此。又其甚者食也。故菲飲食。尤為先務。
書き下し
衣食住は、並びに欠くべからず。而して人欲も亦此に在り。又其の甚しき者は食なり。故に飲食を菲くするは、尤も先務と為す。
現代語訳
衣・食・住は、どれも欠くことができない。しかし人の欲もまたここにある。そのなかでも最も強いのは食である。だから飲食を質素にすることが、何よりも先に取り組むべきことである。
解説
前の条に続けて、飲食の節制を説いた一条です。衣食住は生きるために欠かせないものですが、だからこそ欲もそこに宿ります。必要と欲望の境目がもっとも曖昧になる場所だと言ってよいでしょう。一斎はその中でも食の欲が最も強いとし、飲食を質素にすることを「先務」、真っ先に取りかかるべきことに位置づけました。高遠な修養論ではなく、毎日の食卓から始めよという具体性が、晩年の一斎らしいところです。八十歳を超えて長寿を保った一斎自身の養生観も、ここに重なっているのかもしれません。自分を律する工夫を考えるとき、最も身近で繰り返される行いから手をつけるという順序の示唆として読めます。
この章句が説くこと
衣食住人欲節制先務養生
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