言志四録 / 言志録 第百二十六条 飲食は常用の薬餌
周官有食醫。掌飮食。飮食須視爲常用藥餌耳。食不厭精。膾不厭細。即是製法謹嚴意思。食饐而餲。魚餒而肉敗不食。色惡不食。臭惡不食。即是藥品精良意思。肉雖多不使勝食氣。即是君臣佐使分量意思。
新字:周官有食医。掌飲食。飲食須視為常用薬餌耳。食不厭精。膾不厭細。即是製法謹厳意思。食饐而餲。魚餒而肉敗不食。色悪不食。臭悪不食。即是薬品精良意思。肉雖多不使勝食気。即是君臣佐使分量意思。
書き下し
周官に食医有り、飲食を掌る。飲食は須らく視て常用の薬餌と為すべきのみ。「食は精を厭はず、膾は細を厭はず」とは、即ち是れ製法謹厳の意思なり。「食の饐して餲せる、魚の餒れて肉の敗れたるは食はず。色の悪しきは食はず。臭の悪しきは食はず」とは、即ち是れ薬品精良の意思なり。「肉多しと雖も食の気に勝たしめず」とは、即ち是れ君臣佐使分量の意思なり。
現代語訳
『周官』(『周礼』)には食医という役職があって、王の飲食をつかさどっていた。飲食は、日常用いる薬と見なすべきである。『論語』に「飯はよく精白したものを嫌わず、なますは細かく切ったものを嫌わない」とあるのは、薬の製法を厳格にするという心がけである。「飯がすえて味の変わったもの、魚が傷み肉が腐ったものは食べない。色の悪いものは食べない。においの悪いものは食べない」とあるのは、薬の品質を精良に保つという心がけである。「肉が多くても、主食の量を超えさせない」とあるのは、薬の君・臣・佐・使(主薬と補助薬の配合)の分量を守るという心がけである。
解説
『論語』郷党篇に記された孔子の食生活を、漢方薬の考え方で読み解いた一条です。『周礼』に王の食事を管理する「食医」が置かれていたことを挙げ、飲食は日々の薬だと一斎は言います。精白や細切りは製法の厳格さ、傷んだものを食べないのは薬材の精選、肉を主食より多くしないのは主薬・補助薬を配合する「君臣佐使」の分量に当たるというのです。孔子の食の作法を、ただの好みでなく養生の理として読むところに一斎の工夫があります。長寿を保った一斎の養生観がうかがえる条でもあります。仕事の成果を支える土台として、日々の食事や体調管理をどれほど意識しているかを振り返るきっかけになります。
この章句が説くこと
養生飲食論語節度健康
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