学問のすゝめ / 十六編・手近く独立を守ること・三杯、酒、人を呑む
「一杯、人、酒を呑み、三杯、酒、人を呑む」という諺あり。今この諺を解けば、「酒を好むの欲をもって人の本心を制し、本心をして独立を得せしめず」という義なり。今日世の人々の行状を見るに、本心を制するものは酒のみならず、千状万態の事物ありて本心の独立を妨ぐることはなはだ多し。
書き下し
「一杯、人、酒を呑み、三杯、酒、人を呑む」という諺あり。今この諺を解けば、「酒を好むの欲をもって人の本心を制し、本心をして独立を得せしめず」という義なり。今日世の人々の行状を見るに、本心を制するものは酒のみならず、千状万態の事物ありて本心の独立を妨ぐることはなはだ多し。
現代語訳
一杯は人が酒を呑み、三杯は酒が人を呑む、という諺があります。今この諺を解けば、酒を好む欲が人の本心を制し、本心に独立を得させない、という意味です。今日の世の人々の行いを見ると、本心を制するものは酒だけでなく、さまざまな事物があって本心の独立を妨げることが非常に多い。
解説
精神の独立を説明する入口に、酒の諺が置かれます。飲んでいるつもりが飲まれている、という反転が、本心が何かに支配される状態の見本になります。そして話が広げられます。本心を制するのは酒だけではない、と。ここから欲しいものが次の欲しいものを呼ぶ連鎖の話に移り、身の回りの品物が主人を奪う仕組みが描かれていきます。
この章句が説くこと
諺酒反転支配本心
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