学問のすゝめ / 十五編・事物を疑いて取捨を断ずること・味噌も舶来品ならば
日本人が煙草を咬み、巻煙草を吹かして、西洋人が煙管を用うることあらば、「日本人は器械の術に乏しくしていまだ煙管の発明もあらず」と言わん。日本人が靴を用いて西洋人が下駄をはくことあらば、「日本人は足の指の用法を知らず」と言わん。味噌も舶来品ならばかくまでに軽蔑を受くることもなからん。豆腐も洋人のテーブルに上らばいっそうの声価を増さん。鰻の蒲焼き、茶碗蒸し等に至りては世界第一美味の飛び切りとて評判を得ることなるべし。
書き下し
日本人が煙草を咬み、巻煙草を吹かして、西洋人が煙管を用うることあらば、「日本人は器械の術に乏しくしていまだ煙管の発明もあらず」と言わん。日本人が靴を用いて西洋人が下駄をはくことあらば、「日本人は足の指の用法を知らず」と言わん。味噌も舶来品ならばかくまでに軽蔑を受くることもなからん。豆腐も洋人のテーブルに上らばいっそうの声価を増さん。鰻の蒲焼き、茶碗蒸し等に至りては世界第一美味の飛び切りとて評判を得ることなるべし。
現代語訳
日本人が煙草を噛み、巻き煙草を吸って、西洋人が煙管を用いることがあれば、日本人は器械の技術に乏しくてまだ煙管の発明もない、と言うでしょう。日本人が靴を履いて西洋人が下駄を履くことがあれば、日本人は足の指の使い方を知らない、と言うでしょう。味噌も舶来品であればこれほど軽蔑を受けることもないでしょう。豆腐も西洋人の食卓に上ればいっそう評価が上がるでしょう。鰻の蒲焼きや茶碗蒸しに至っては、世界第一の美味として飛び切りの評判を得ることでしょう。
解説
入れ替えの実験が軽快な結びを迎えます。煙管も下駄も、西洋の側にあれば工夫と呼ばれる。そして食べ物が並びます。味噌も豆腐も、舶来品なら軽蔑されず、鰻の蒲焼きや茶碗蒸しは世界一の美味と評判になるだろう、と。身近な味覚で締めることで、評価が出どころに引きずられるという主張が、誰にでも実感できる形になっています。
この章句が説くこと
味噌豆腐舶来評判実感
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