学問のすゝめ / 十五編・事物を疑いて取捨を断ずること・またこれを軽々疑うべからず
然りといえども、事物の軽々信ずべからざることはたして是ならば、またこれを軽々疑うべからず。この信疑の際につき必ず取捨の明なかるべからず。けだし学問の要はこの明智を明らかにするにあるものならん。わが日本においても、開国以来とみに人心の趣を変じ、政府を改革し、貴族を倒し、学校を起こし、新聞局を開き、鉄道・電信・兵制・工業等、百般の事物一時に旧套を改めたるは、いずれもみな数千百年以来の習慣に疑いを容れ、これを変革せんことを試みて功を奏したるものと言うべし。
書き下し
然りといえども、事物の軽々信ずべからざることはたして是ならば、またこれを軽々疑うべからず。この信疑の際につき必ず取捨の明なかるべからず。けだし学問の要はこの明智を明らかにするにあるものならん。わが日本においても、開国以来とみに人心の趣を変じ、政府を改革し、貴族を倒し、学校を起こし、新聞局を開き、鉄道・電信・兵制・工業等、百般の事物一時に旧套を改めたるは、いずれもみな数千百年以来の習慣に疑いを容れ、これを変革せんことを試みて功を奏したるものと言うべし。
現代語訳
とはいえ、事物を軽々しく信じてはならないというのが正しいなら、またこれを軽々しく疑ってもなりません。この信と疑いの間について、必ず取捨の明るさがなくてはなりません。思うに学問の要は、この明らかな智恵を明らかにすることにあるのでしょう。わが日本においても、開国以来にわかに人心の趣を変え、政府を改革し、貴族を倒し、学校を起こし、新聞社を開き、鉄道、電信、兵制、工業など、あらゆる事物が一度に古い型を改めたのは、いずれもみな数千百年来の習慣に疑いを差し挟み、これを変革しようと試みて成功したものと言うべきです。
解説
疑いの擁護に歯止めがかかります。軽々しく信じてはならないなら、軽々しく疑ってもならない、と。そして学問の要が定義されます。信じるべきものと疑うべきものを見分ける明るさを磨くこと。維新の改革が疑いの成果として評価されますが、この評価はそのまま続きません。次の段で、その疑いが本当に自分から出たものかが問われることになります。
この章句が説くこと
歯止め取捨明智学問維新
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