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学問のすゝめ / 十四編・世話の字の義・諺にいわゆる大きに御苦労

また世に貧民救助とて、人物の良否を問わず、その貧乏の原因を尋ねず、ただ貧乏の有様を見て米銭を与うることあり。鰥寡孤独、実に頼るところなき者へは救助も尤もなれども、五升の御救米を貰うて三升は酒にして飲む者なきにあらず。禁酒の指図もできずしてみだりに米を与うるは、指図の行き届かずして保護の度を越えたるものなり。諺にいわゆる「大きに御苦労」とはこのことなり。英国などにても救窮の法に困却するはこの一条なりという。

書き下し

また世に貧民救助とて、人物の良否を問わず、その貧乏の原因を尋ねず、ただ貧乏の有様を見て米銭を与うることあり。鰥寡孤独、実に頼るところなき者へは救助も尤もなれども、五升の御救米を貰うて三升は酒にして飲む者なきにあらず。禁酒の指図もできずしてみだりに米を与うるは、指図の行き届かずして保護の度を越えたるものなり。諺にいわゆる「大きに御苦労」とはこのことなり。英国などにても救窮の法に困却するはこの一条なりという。

現代語訳

また世に貧民救助といって、人物の良し悪しを問わず、その貧乏の原因を尋ねず、ただ貧乏のありさまを見て米や銭を与えることがあります。身寄りのない者で実に頼るところのない人への救助はもっともですが、五升のお救い米をもらって三升は酒にして飲む者がないではありません。禁酒の指図もできずにむやみに米を与えるのは、指図が行き届かないのに保護の度を越したものです。諺にいわゆる大きにご苦労とは、このことです。イギリスなどでも救貧の法に困っているのはこの一点だといいます。

解説

前段の口出しだけの世話に対して、こちらは出すだけの世話です。原因も人柄も問わずに米を配れば、酒に変える者が出る。指図が伴わない保護は度を越している、と。身寄りのない人への救助は当然だと断ってあるので、救済そのものの否定ではありません。イギリスも同じ点で困っているという一言が添えられ、制度設計の普遍的な難所として提示されています。
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この章句が説くこと

救貧条件保護過剰制度

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