学問のすゝめ / 十四編・世話の字の義・諺にいわゆる大きにお世話
また昔かたぎに、田舎の老人が旧き本家の系図を持ち出して別家の内を掻きまわし、あるいは銭もなき叔父さまが実家の姪を呼びつけてその家事を指図し、その薄情を責めその不行届きを咎め、はなはだしきに至りては、知らぬ祖父の遺言などとて姪の家の私有を奪い去らんとするがごときは、指図の世話は厚きに過ぎて保護の世話の痕跡もなきものなり。諺にいわゆる「大きにお世話」とはこのことなり。
書き下し
また昔かたぎに、田舎の老人が旧き本家の系図を持ち出して別家の内を掻きまわし、あるいは銭もなき叔父さまが実家の姪を呼びつけてその家事を指図し、その薄情を責めその不行届きを咎め、はなはだしきに至りては、知らぬ祖父の遺言などとて姪の家の私有を奪い去らんとするがごときは、指図の世話は厚きに過ぎて保護の世話の痕跡もなきものなり。諺にいわゆる「大きにお世話」とはこのことなり。
現代語訳
また昔気質で、田舎の老人が古い本家の系図を持ち出して分家の内を掻き回し、あるいは銭もない叔父が実家の姪を呼びつけてその家事を指図し、その薄情を責めその不行き届きを咎め、甚だしきに至っては、知らない祖父の遺言などと言って姪の家の私有財産を奪い去ろうとするようなものは、指図の世話が厚すぎて保護の世話の痕跡もないものです。諺にいわゆる大きにお世話とは、このことです。
解説
偏りのもう一つの型が、身近な情景で描かれます。系図を持ち出して分家に口を出す老人、金も出さずに姪の家事を指図する叔父。挙句には祖父の遺言と称して財産まで取ろうとします。負担を引き受けずに権限だけを行使する姿です。そして諺で締められる。大きにお世話とはこのことだ、と。世話という言葉の分解が、誰もが知る一言に着地しています。
この章句が説くこと
口出し無負担権限諺余計
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