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学問のすゝめ / 十四編・心事の棚卸し・商売にて言えば棚卸しの総勘定

右所論のごとく、人生の有様は徳義のことにつきても思いのほかに悪事をなし、智恵のことにつきても思いのほかに愚を働き、思いのほかに事業を遂げざるものなり。この不都合を防ぐの方便はさまざまなれども、今ここに人のあまり心づかざる一ヵ条あり。その箇条とはなんぞや。事業の成否得失につき、ときどき自分の胸中に差引きの勘定を立つることなり。商売にて言えば棚卸しの総勘定のごときものこれなり。

書き下し

右所論のごとく、人生の有様は徳義のことにつきても思いのほかに悪事をなし、智恵のことにつきても思いのほかに愚を働き、思いのほかに事業を遂げざるものなり。この不都合を防ぐの方便はさまざまなれども、今ここに人のあまり心づかざる一ヵ条あり。その箇条とはなんぞや。事業の成否得失につき、ときどき自分の胸中に差引きの勘定を立つることなり。商売にて言えば棚卸しの総勘定のごときものこれなり。

現代語訳

右に論じたように、人生のありさまは、徳義のことについても思いのほかに悪事をなし、智恵のことについても思いのほかに愚かを働き、思いのほかに事業を遂げないものです。この不都合を防ぐ手立てはさまざまですが、今ここに人があまり気づかない一か条があります。その箇条とは何か。事業の成否や得失について、ときどき自分の胸の中に差し引きの勘定を立てることです。商売で言えば棚卸しの総勘定のようなものが、これです。

解説

三つの不都合が改めて並べられ、対策が一つ示されます。胸の中に差し引きの勘定を立てること、つまり棚卸しです。十四編の題がここで説明されます。反省や内省という言葉ではなく、商家の帳簿の用語が選ばれているのが特徴で、気分ではなく数え上げる作業として自己点検を捉えています。定期的に締める、という発想が次の段で展開されます。

この章句が説くこと

棚卸し差引点検帳簿定期

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