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学問のすゝめ / 十二編・人の品行は高尚ならざるべからざるの論・洋商の向かうところはアジヤに敵なし

右のごとく、インドの文も、トルコの武も、かつてその国の文明に益せざるはなんぞや。その人民の所見わずかに一国内にとどまり、自国の有様に満足し、その有様の一部分をもって他国に比較し、その間に優劣なきを見てこれに欺かれ、議論もここに止まり、徒党もここに止まり、勝敗栄辱ともに他の有様の全体を目的とすることを知らずして、万民太平を謡うか、または兄弟墻に鬩ぐのその間に、商売の権威に圧しられて国を失うたるものなり。洋商の向かうところはアジヤに敵なし。恐れざるべからず。もしこの勁敵を恐れて、兼ねてまたその国の文明を慕うことあらば、よく内外の有様を比較して勉むるところなかるべからず。

書き下し

右のごとく、インドの文も、トルコの武も、かつてその国の文明に益せざるはなんぞや。その人民の所見わずかに一国内にとどまり、自国の有様に満足し、その有様の一部分をもって他国に比較し、その間に優劣なきを見てこれに欺かれ、議論もここに止まり、徒党もここに止まり、勝敗栄辱ともに他の有様の全体を目的とすることを知らずして、万民太平を謡うか、または兄弟墻に鬩ぐのその間に、商売の権威に圧しられて国を失うたるものなり。洋商の向かうところはアジヤに敵なし。恐れざるべからず。もしこの勁敵を恐れて、兼ねてまたその国の文明を慕うことあらば、よく内外の有様を比較して勉むるところなかるべからず。

現代語訳

右のように、インドの文もトルコの武も、かつてその国の文明に役立たなかったのはなぜでしょうか。その人民の見るところがわずか一国内にとどまり、自国のありさまに満足し、そのありさまの一部分だけを他国と比べて、その間に優劣がないのを見てこれに欺かれ、議論もここに止まり、徒党もここに止まり、勝敗も栄辱もともに他のありさまの全体を目的とすることを知らずに、万民が太平を歌うか、または兄弟が垣根の内で争っているうちに、商売の威力に圧されて国を失ったのです。西洋の商人が向かうところ、アジアに敵はありません。恐れなければなりません。もしこの強敵を恐れ、同時にその国の文明を慕うことがあるなら、よく内外のありさまを比較して努めるところがなくてはなりません。

解説

二国が滅んだ原因が、比較の失敗として説明されます。一部分だけを比べて優劣がないと思い込み、視野が国内に止まったまま内輪で争っていた、と。十二編で説かれてきた全体同士の比較が、国家の存亡に直結する話だったことが分かります。そして警告が置かれます。西洋の商人にアジアで敵はない、恐れよ、と。恐れを出発点に、比較して努めよという結びになっています。
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この章句が説くこと

視野部分比較内輪商業警告

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