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学問のすゝめ / 十二編・演説の法を勧むるの説・沈深なるは淵のごとく活発なるは飛鳥のごとく

方今わが国民においてもっとも憂うべきはその見識の賤しきことなり。これを導きて高尚の域に進めんとするはもとより今の学者の職分なれば、いやしくもその方便あるを知らば力を尽くしてこれに従事せざるべからず。しかるに学問の道において、談話、演説の大切なるはすでに明白にして、今日これを実に行なう者なきはなんぞや。学者の懶惰と言うべし。人間の事には内外両様の別ありて、両ながらこれを勉めざるべからず。今の学者は内の一方に身を委して、外の務めを知らざる者多し。これを思わざるべからず。私に沈深なるは淵のごとく、人に接して活発なるは飛鳥のごとく、その密なるや内なきがごとく、その豪大なるや外なきがごとくして、はじめて真の学者と称すべきなり。

書き下し

方今わが国民においてもっとも憂うべきはその見識の賤しきことなり。これを導きて高尚の域に進めんとするはもとより今の学者の職分なれば、いやしくもその方便あるを知らば力を尽くしてこれに従事せざるべからず。しかるに学問の道において、談話、演説の大切なるはすでに明白にして、今日これを実に行なう者なきはなんぞや。学者の懶惰と言うべし。人間の事には内外両様の別ありて、両ながらこれを勉めざるべからず。今の学者は内の一方に身を委して、外の務めを知らざる者多し。これを思わざるべからず。私に沈深なるは淵のごとく、人に接して活発なるは飛鳥のごとく、その密なるや内なきがごとく、その豪大なるや外なきがごとくして、はじめて真の学者と称すべきなり。

現代語訳

今わが国民において最も憂うべきは、その見識が卑しいことです。これを導いて高尚な域に進めようとするのはもとより今の学者の職分ですから、かりにもその手立てがあると知ったなら、力を尽くしてこれに従事しなければなりません。ところが学問の道で談話と演説が大切なことはすでに明白なのに、今日これを実際に行う者がないのはなぜでしょうか。学者の怠惰と言うべきです。人の事には内と外の二通りの別があって、両方とも努めなければなりません。今の学者は内の一方に身を委ねて、外の務めを知らない者が多い。これを考えねばなりません。一人でいるときは淵のように深く沈み、人に接すれば飛ぶ鳥のように活発で、その細やかさは内がないようであり、その大きさは外がないようであって、はじめて真の学者と称すべきです。

解説

十二編の前半が結ばれ、学者への注文が出ます。談話と演説が大切だと分かっていながら誰も実行しないのは怠惰だ、と。内向きの務めだけで満ち足りている姿が批判されます。そして理想像が対句で描かれるのが美しい。一人では淵のように深く、人と接すれば飛ぶ鳥のように活発である、と。静と動の両方を備えることが求められており、学者を書斎から連れ出そうとする意図が現れています。

この章句が説くこと

見識談話内外静動理想

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