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学問のすゝめ / 十一編・名分をもって偽君子を生ずるの論・他人と他人との付合いには情実を用ゆべからず

されどもよく事実を考うれば、政府と人民とはもと骨肉の縁あるにあらず、実に他人の付合いなり。他人と他人との付合いには情実を用ゆべからず、必ず規則約束なるものを作り、互いにこれを守りて厘毛の差を争い、双方ともにかえって円く治まるものにて、これすなわち国法の起こりし所以なり。かつ右のごとく、聖明の君と賢良の士と柔順なる民とその注文はあれども、いずれの学校に入れば、かく無疵なる聖賢を造り出だすべきや、なんらの教育を施せばかく結構なる民を得べきや、唐人も周の世以来しきりにここに心配せしことならんが、今日まで一度も注文どおりに治まりたる時はなく、とどのつまりは今のとおりに外国人に押し付けられたるにあらずや。

書き下し

されどもよく事実を考うれば、政府と人民とはもと骨肉の縁あるにあらず、実に他人の付合いなり。他人と他人との付合いには情実を用ゆべからず、必ず規則約束なるものを作り、互いにこれを守りて厘毛の差を争い、双方ともにかえって円く治まるものにて、これすなわち国法の起こりし所以なり。かつ右のごとく、聖明の君と賢良の士と柔順なる民とその注文はあれども、いずれの学校に入れば、かく無疵なる聖賢を造り出だすべきや、なんらの教育を施せばかく結構なる民を得べきや、唐人も周の世以来しきりにここに心配せしことならんが、今日まで一度も注文どおりに治まりたる時はなく、とどのつまりは今のとおりに外国人に押し付けられたるにあらずや。

現代語訳

しかしよく事実を考えれば、政府と人民とはもともと血のつながりがあるのではなく、実は他人の付き合いです。他人と他人の付き合いには情実を用いてはならず、必ず規則や約束というものを作り、互いにこれを守ってわずかな差をも争い、双方ともかえって円満に治まるものです。これが国法の起こった理由です。しかも右のように、聖なる明君と賢く正しい士と柔順な民という注文はあっても、どの学校に入ればこんな傷のない聖賢を作り出せるのでしょうか、どんな教育を施せばこんな結構な民を得られるのでしょうか。中国の人も周の世以来しきりにここを心配したことでしょうが、今日まで一度も注文通りに治まったときはなく、結局は今のように外国人に押し付けられているではありませんか。

解説

理想論への反論が二つの角度から来ます。一つは関係の性質で、政府と人民は他人だから情ではなく規則で付き合え、という指摘です。わずかな差を争ったほうがかえって円満に治まる、という逆説が実務的で説得力があります。もう一つは供給の問題で、傷のない聖賢や柔順な民をどこで調達するのか、と問う。理想の統治が人材の供給計画を欠いていることを突いています。
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この章句が説くこと

他人規則情実供給理想

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