学問のすゝめ / 十編・前編のつづき、中津の旧友に贈る・一人にてこの日本国を維持するの気力
これによりて考うれば、今の学者たる者はけっして尋常学校の教育をもって満足すべからず、その志を高遠にして学術の真面目に達し、不覊独立もって他人に依頼せず、あるいは同志の朋友なくば一人にてこの日本国を維持するの気力を養い、もって世のために尽くさざるべからず。余輩もとより和漢の古学者流が人を治むるを知りてみずから修むるを知らざる者を好まず。これを好まざればこそ、この書の初編より人民同権の説を主張し、人々みずからその責めに任じてみずからその力に食むの大切なるを論じたれども、この自力に食むの一事にてはいまだわが学問の趣意を終われりとするに足らず。
書き下し
これによりて考うれば、今の学者たる者はけっして尋常学校の教育をもって満足すべからず、その志を高遠にして学術の真面目に達し、不覊独立もって他人に依頼せず、あるいは同志の朋友なくば一人にてこの日本国を維持するの気力を養い、もって世のために尽くさざるべからず。余輩もとより和漢の古学者流が人を治むるを知りてみずから修むるを知らざる者を好まず。これを好まざればこそ、この書の初編より人民同権の説を主張し、人々みずからその責めに任じてみずからその力に食むの大切なるを論じたれども、この自力に食むの一事にてはいまだわが学問の趣意を終われりとするに足らず。
現代語訳
これによって考えれば、今の学者たる者は決して並の学校教育で満足してはならず、その志を高く遠くして学術の真価に達し、束縛されず独立して他人に頼らず、あるいは同志の友がいなければ一人でこの日本国を維持する気力を養い、それによって世のために尽くさねばなりません。私はもとより和漢の古い学者たちが、人を治めることを知って自分を修めることを知らないのを好みません。これを好まないからこそ、この書の初編から人民が同じ権利を持つという説を主張し、人々が自らその責任を引き受け、自分の力で食べることの大切さを論じてきましたが、この自力で食べるという一事だけでは、まだわが学問の趣旨を終えたとするには足りません。
解説

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