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学問のすゝめ / 十編・前編のつづき、中津の旧友に贈る・高利貸といえどもこれに三舎を譲るべし

世間諸商売のうちにかかる割合の大利を得るものあるべきや、高利貸といえどもこれに三舎を譲るべし。もとより物価は世の需要の多寡により高低あるものにて、方今、政府をはじめ諸方にて洋学者流を求むること急なるがため、この相場の景気をも生じたるものなれば、あえてその人を奸なりとて咎むるにあらず、またこれを買う者を愚なりとて謗るにあらず、ただわが輩の存意には、この人をしてなお三、五年の艱苦を忍び真に実学を勉強して後に事につかしめなば、大いに成すこともあらんと思うのみ。かくありてこそ日本全国に分布せる智徳に力を増して、はじめて西洋諸国の文明と鋒を争うの場合に至るべきなり。

書き下し

世間諸商売のうちにかかる割合の大利を得るものあるべきや、高利貸といえどもこれに三舎を譲るべし。もとより物価は世の需要の多寡により高低あるものにて、方今、政府をはじめ諸方にて洋学者流を求むること急なるがため、この相場の景気をも生じたるものなれば、あえてその人を奸なりとて咎むるにあらず、またこれを買う者を愚なりとて謗るにあらず、ただわが輩の存意には、この人をしてなお三、五年の艱苦を忍び真に実学を勉強して後に事につかしめなば、大いに成すこともあらんと思うのみ。かくありてこそ日本全国に分布せる智徳に力を増して、はじめて西洋諸国の文明と鋒を争うの場合に至るべきなり。

現代語訳

世間の諸商売のうちにこれほど割のよい大利を得るものがあるでしょうか。高利貸しでさえこれには遠く及ばないでしょう。もとより物価は世の需要の多少によって高低があるもので、今は政府をはじめ各方面で洋学者を求めることが急なため、この相場の景気も生じたのですから、あえてその人を狡いと咎めるのではなく、またこれを買う者を愚かだと謗るのでもありません。ただ私の考えでは、この人になお三年五年の苦労を忍ばせて真に実学を勉強させてから事につかせれば、大いに成すこともあるだろうと思うだけです。そうであってこそ日本全国に行き渡る智徳の力を増し、はじめて西洋諸国の文明と矛先を争う場に至れるのです。

解説

高利貸しさえ及ばない利回りだ、と皮肉が一段強まります。しかし責める相手を慎重に選んでいるのが特徴です。人材が急に求められているから相場が上がったのであって、売る側も買う側も責めない、と。批判は個人ではなく状況に向けられます。そして提案が置かれます。もう三年五年こらえて実学を修めてから世に出よ、と。急いで使われる才を惜しむ言い方で、十編の主題が定まります。

この章句が説くこと

相場需要実学忍耐提案

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