学問のすゝめ / 八編・わが心をもって他人の身を制すべからず・家の内にては公然と人を恥ずかしめ
政府の強大にして小民を制圧するの議論は、前編にも記したるゆえここにはこれを略し、まず人間男女の間をもってこれを言わん。そもそも世に生まれたる者は、男も人なり女も人なり。この世に欠くべからざる用をなすところをもって言えば、天下一日も男なかるべからず、また女なかるべからず。その功能いかにも同様なれども、ただその異なるところは、男は強く女は弱し。大の男の力にて女と闘わば必ずこれに勝つべし。すなわちこれ男女の同じからざるところなり。いま世間を見るに、力ずくにて人の物を奪うか、または人を恥ずかしむる者あれば、これを罪人と名づけて刑にも行なわるることあり。しかるに家の内にては公然と人を恥ずかしめ、かつてこれを咎むる者なきはなんぞや。
書き下し
政府の強大にして小民を制圧するの議論は、前編にも記したるゆえここにはこれを略し、まず人間男女の間をもってこれを言わん。そもそも世に生まれたる者は、男も人なり女も人なり。この世に欠くべからざる用をなすところをもって言えば、天下一日も男なかるべからず、また女なかるべからず。その功能いかにも同様なれども、ただその異なるところは、男は強く女は弱し。大の男の力にて女と闘わば必ずこれに勝つべし。すなわちこれ男女の同じからざるところなり。いま世間を見るに、力ずくにて人の物を奪うか、または人を恥ずかしむる者あれば、これを罪人と名づけて刑にも行なわるることあり。しかるに家の内にては公然と人を恥ずかしめ、かつてこれを咎むる者なきはなんぞや。
現代語訳
政府が強大で小民を制圧するという議論は前編にも記したのでここでは省き、まず男女の間について言いましょう。そもそも世に生まれた者は、男も人であり女も人です。この世に欠くことのできない用をなす点で言えば、天下は一日も男がなくてはならず、また女がなくてはなりません。その働きはまったく同様ですが、ただ異なるのは、男は強く女は弱いということです。大の男の力で女と闘えば必ず勝つでしょう。これが男女の同じでないところです。今、世間を見ると、力ずくで人の物を奪うか、または人を辱める者があれば、これを罪人と名づけて刑に処されることもあります。ところが家の中では公然と人を辱めて、これを咎める者がないのはなぜでしょうか。
解説
この章句が説くこと
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