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学問のすゝめ / 七編・国民の職分を論ず・運上を払うて政府の保護を買う

人民はすでに一国の家元にて、国を護るための入用を払うはもとよりその職分なれば、この入用を出だすにつきけっして不平の顔色を見わすべからず。国を護るためには役人の給料なかるべからず、海陸の軍費なかるべからず、裁判所の入用もあり、地方官の入用もあり、その高を集めてこれを見れば大金のように思わるれども、一人前の頭に割り付けてなにほどなるや。日本にて歳入の高を全国の人口に割り付けなば、一人前に一円か二円なるべし。一年の間にわずか一、二円の金を払うて政府の保護を被り、夜盗押込みの患いもなく、ひとり旅行に山賊の恐れもなくして、安穏にこの世を渡るは大なる便利ならずや。およそ世の中に割合よき商売ありといえども、運上を払うて政府の保護を買うほど安きものはなかるべし。

書き下し

人民はすでに一国の家元にて、国を護るための入用を払うはもとよりその職分なれば、この入用を出だすにつきけっして不平の顔色を見わすべからず。国を護るためには役人の給料なかるべからず、海陸の軍費なかるべからず、裁判所の入用もあり、地方官の入用もあり、その高を集めてこれを見れば大金のように思わるれども、一人前の頭に割り付けてなにほどなるや。日本にて歳入の高を全国の人口に割り付けなば、一人前に一円か二円なるべし。一年の間にわずか一、二円の金を払うて政府の保護を被り、夜盗押込みの患いもなく、ひとり旅行に山賊の恐れもなくして、安穏にこの世を渡るは大なる便利ならずや。およそ世の中に割合よき商売ありといえども、運上を払うて政府の保護を買うほど安きものはなかるべし。

現代語訳

人民はすでに一国の家元で、国を守るための費用を払うのはもとよりその職分ですから、この費用を出すことについて決して不平の顔色を見せてはなりません。国を守るためには役人の給料が要り、海陸の軍費が要り、裁判所の費用もあり、地方官の費用もあります。その額を集めて見れば大金のように思われますが、一人あたりに割り付ければどれほどでしょうか。日本の歳入の額を全国の人口に割り付ければ、一人あたり一円か二円でしょう。一年の間にわずか一、二円の金を払って政府の保護を受け、夜盗や押し込みの心配もなく、一人旅に山賊の恐れもなく、安穏にこの世を渡るのは大きな便利ではありませんか。およそ世の中に割のよい商売があるとはいえ、税を払って政府の保護を買うほど安いものはないでしょう。

解説

税が損ではなく買い物として説明されます。歳入を人口で割れば一人一、二円。それで夜盗の心配がなく一人旅もできるなら、これほど安い買い物はない、と。前段では失敗の代金を人民が払うと厳しく言い、ここでは払う対価に見合う中身を数えている。同じ財布の話が両側から扱われています。不平の顔色を見せるなという言い方は強いですが、根拠は感情ではなく計算です。
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