学問のすゝめ / 七編・国民の職分を論ず・かつ力を尽くしかつ堪忍して時節を待つべき
ついにその商社の分散するに至らば、その損亡は商社百人一様の引受けなるべし。愚もまたはなはだしきものと言うべし。ゆえに国法は不正不便なりといえども、その不正不便を口実に設けてこれを破るの理なし。もし事実において不正不便の箇条あらば、一国の支配人たる政府に説き勧めて静かにその法を改めしむべし。政府もしわが説に従わずんば、かつ力を尽くしかつ堪忍して時節を待つべきなり。
書き下し
ついにその商社の分散するに至らば、その損亡は商社百人一様の引受けなるべし。愚もまたはなはだしきものと言うべし。ゆえに国法は不正不便なりといえども、その不正不便を口実に設けてこれを破るの理なし。もし事実において不正不便の箇条あらば、一国の支配人たる政府に説き勧めて静かにその法を改めしむべし。政府もしわが説に従わずんば、かつ力を尽くしかつ堪忍して時節を待つべきなり。
現代語訳
ついにその商社が解散するに至れば、その損失は商社の百人が一様に引き受けることになります。愚かさも甚だしいものと言うべきです。ですから国法は不正で不便であっても、その不正や不便を口実にしてこれを破る道理はありません。もし事実として不正や不便の箇条があるなら、一国の支配人である政府に説き勧めて、静かにその法を改めさせるべきです。政府がもし自分の説に従わなければ、力を尽くしつつ、また堪えて時節を待つべきです。
解説
崩れたときの損が誰に来るかが示されます。会社が潰れれば百人全員がかぶる。国も同じで、混乱の損は全員のものです。そのうえで正しい手順が三段で示されます。不正なら説いて改めさせる、聞き入れられなければ力を尽くし、なお堪えて時節を待つ。諦めろとは言っていないところが要で、努力と忍耐を同時に求めています。次の段からは、その忍耐が破られる場合の話に移ります。
この章句が説くこと
損失手順改正忍耐時節
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