師導古典を学びたいすべての人に

学問のすゝめ / 五編・明治七年一月一日の詞・文明の事件はことごとくわが私有となし

その科は枚挙に遑あらず。商売勤めざるべからず、法律議せざるべからず、工業起こさざるべからず、農業勧めざるべからず、著書・訳術・新聞の出版、およそ文明の事件はことごとく取りてわが私有となし、国民の先をなして政府と相助け、官の力と私の力と互いに平均して一国全体の力を増し、かの薄弱なる独立を移して動かすべからざるの基礎に置き、外国と鋒を争いて毫も譲ることなく、今より数十の新年を経て、顧みて今月今日の有様を回想し、今日の独立を悦ばずしてかえってこれを愍笑するの勢いに至るは、豈一大快事ならずや。学者よろしくその方向を定めて期するところあるべきなり。

書き下し

その科は枚挙に遑あらず。商売勤めざるべからず、法律議せざるべからず、工業起こさざるべからず、農業勧めざるべからず、著書・訳術・新聞の出版、およそ文明の事件はことごとく取りてわが私有となし、国民の先をなして政府と相助け、官の力と私の力と互いに平均して一国全体の力を増し、かの薄弱なる独立を移して動かすべからざるの基礎に置き、外国と鋒を争いて毫も譲ることなく、今より数十の新年を経て、顧みて今月今日の有様を回想し、今日の独立を悦ばずしてかえってこれを愍笑するの勢いに至るは、豈一大快事ならずや。学者よろしくその方向を定めて期するところあるべきなり。

現代語訳

その項目は数え上げるいとまもありません。商売は勤めねばならず、法律は議論せねばならず、工業は起こさねばならず、農業は勧めねばならない。著述、翻訳、新聞の出版など、およそ文明に関する事柄はことごとく取って自分のものとし、国民の先頭に立って政府と助け合い、官の力と民の力とが互いに釣り合って一国全体の力を増し、あの弱い独立を移して動かしがたい基礎の上に置き、外国と矛先を争って少しも譲らず、今から数十回の新年を経て、振り返って今日このありさまを思い出し、今日の独立を喜ぶどころか、かえってこれを憐れみ笑うような勢いに至れば、なんと痛快なことではありませんか。学者はその方向を定めて期するところを持つべきです。

解説

五編の結びで、やるべきことが一気に列挙されます。商売、法律、工業、農業、著述、翻訳、新聞。第四編で挙げられた項目がここで出そろい、すべて自分のものにせよと言われます。官と民が釣り合って全体の力が増す、という設計図もはっきり示されます。そして未来からの視線が置かれるのが見事です。数十年後に今日を振り返り、この程度の独立を喜んでいたのかと笑える日が来れば痛快ではないか、と。目標の高さを、時間を跨いだ情景として描いた一段になっています。

この章句が説くこと

列挙私有均衡未来目標

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる