学問のすゝめ / 五編・明治七年一月一日の詞・読書は学問の術なり学問は事をなすの術なり
ひとりわが慶応義塾の社中はわずかにこの災難を免れて、数年独立の名を失わず、独立の塾にいて独立の気を養い、その期するところは全国の独立を維持するの一事にあり。然りといえども、時勢の世を制するやその力急流のごとくまた大風のごとし。この勢いに激して屹立するはもとより易きにあらず、非常の勇力あるにあらざれば、知らずして流れ識らずして靡き、ややもすればその脚を失するの恐れあるべし。そもそも人の勇力はただ読書のみによりて得べきものにあらず。読書は学問の術なり、学問は事をなすの術なり。実地に接して事に慣るるにあらざればけっして勇力を生ずべからず。わが社中すでにその術を得たる者は、貧苦を忍び艱難を冒して、その所得の知見を文明の事実に施さざるべからず。
書き下し
ひとりわが慶応義塾の社中はわずかにこの災難を免れて、数年独立の名を失わず、独立の塾にいて独立の気を養い、その期するところは全国の独立を維持するの一事にあり。然りといえども、時勢の世を制するやその力急流のごとくまた大風のごとし。この勢いに激して屹立するはもとより易きにあらず、非常の勇力あるにあらざれば、知らずして流れ識らずして靡き、ややもすればその脚を失するの恐れあるべし。そもそも人の勇力はただ読書のみによりて得べきものにあらず。読書は学問の術なり、学問は事をなすの術なり。実地に接して事に慣るるにあらざればけっして勇力を生ずべからず。わが社中すでにその術を得たる者は、貧苦を忍び艱難を冒して、その所得の知見を文明の事実に施さざるべからず。
現代語訳
ただわが慶応義塾の仲間だけがわずかにこの災難を免れて、数年にわたり独立の名を失わず、独立の塾にいて独立の気を養い、その期するところは全国の独立を維持するという一事にあります。とはいえ、時勢が世を制する力は急流のようであり、また大風のようです。この勢いに逆らって立ち続けるのはもとより容易ではなく、並外れた勇気と力がなければ、知らないうちに流され、気づかないうちになびき、ともすればその足を失う恐れがあるでしょう。そもそも人の勇気と力は、読書だけによって得られるものではありません。読書は学問の術であり、学問は事を行う術です。実地に接して事に慣れなければ、決して勇気と力は生まれません。わが仲間ですでにその術を得た者は、貧しさを忍び困難を冒して、その得た知見を文明の事実に施さねばなりません。
解説
この章句が説くこと
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