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学問のすゝめ / 五編・六編より後はまたもとの体裁に復り

世の学者はおおむねみな腰ぬけにてその気力は不慥かなれども、文字を見る眼はなかなか慥かにして、いかなる難文にても困る者なきゆえ、この二冊にも遠慮なく文章をむずかしく書きその意味もおのずから高上になりて、これがためもと民間の読本たるべき学問のすすめの趣意を失いしは、初学の輩に対してはなはだ気の毒なれども、六編より後はまたもとの体裁に復り、もっぱら解しやすきを主として初学の便利に供しさらに難文を用いることなかるべきがゆえに、看官この二冊をもって全部の難易を評するなかれ。

書き下し

世の学者はおおむねみな腰ぬけにてその気力は不慥かなれども、文字を見る眼はなかなか慥かにして、いかなる難文にても困る者なきゆえ、この二冊にも遠慮なく文章をむずかしく書きその意味もおのずから高上になりて、これがためもと民間の読本たるべき学問のすすめの趣意を失いしは、初学の輩に対してはなはだ気の毒なれども、六編より後はまたもとの体裁に復り、もっぱら解しやすきを主として初学の便利に供しさらに難文を用いることなかるべきがゆえに、看官この二冊をもって全部の難易を評するなかれ。

現代語訳

世の学者はおおむねみな腰抜けで気力は当てになりませんが、文字を見る目はなかなか確かで、どんな難しい文章でも困る者はいません。そこでこの二冊にも遠慮なく文章を難しく書き、その意味も自然と高尚になって、もともと民間の読本であるはずの学問のすすめの趣旨を失ったのは、学び始めの人々に対してたいへん気の毒です。しかし六編より後はまた元の体裁に戻り、もっぱら分かりやすさを第一として初学者の便に供し、さらに難しい文章を用いることはありませんから、読者はこの二冊で全体の難易を判断しないでください。

解説

文体の断りが続き、六編からは元の平易な書き方に戻すと予告します。学者は気力は当てにならないが字を読む目は確かだ、という軽口が挟まれ、難しく書いた相手がはっきりします。そして読者への注意で終わる。この二冊で全体の難易を判断するな、と。ここで脱落されては困るという書き手の心配が出ており、一冊の本を最後まで読ませるための配慮が具体的な言葉になっています。

この章句が説くこと

文体予告平易配慮読者

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