学問のすゝめ / 四編・付録・政府は官員の多きを患う
二にいわく、「政府、人に乏し、有力の人物、政府を離れなば官務に差しつかえあるべし」と。答えていわく、けっして然らず、今の政府は官員の多きを患うるなり。事を簡にして官員を減ずれば、その事務はよく整理してその人員は世間の用をなすべし、一挙して両得なり。ことさらに政府の事務を多端にし、有用の人を取りて無用の事をなさしむるは策の拙なるものと言うべし。かつこの人物政府を離るるも去りて外国に行くにあらず、日本に居て日本の事をなすのみ、なんぞ患うるに足らん」
書き下し
二にいわく、「政府、人に乏し、有力の人物、政府を離れなば官務に差しつかえあるべし」と。答えていわく、「けっして然らず。今の政府は官員の多きを患うるなり。事を簡にして官員を減ずれば、その事務はよく整理してその人員は世間の用をなすべし、一挙して両得なり。ことさらに政府の事務を多端にし、有用の人を取りて無用の事をなさしむるは、策の拙なるものと言うべし。かつこの人物、政府を離るるも去りて外国に行くにあらず、日本に居て日本の事をなすのみ、なんぞ患うるに足らん」。
現代語訳
二つ目はこうです。政府は人が足りず、力のある人物が政府を離れれば、官の仕事に差し支えるだろう、と。答えて言います。決してそうではありません。今の政府は官員が多いことを悩んでいるのです。仕事を簡単にして官員を減らせば、その事務はよく整理され、その人員は世間の役に立つでしょう。一挙両得です。わざわざ政府の事務を煩雑にし、有用な人を取って無用な仕事をさせるのは、拙い策と言うべきです。しかもこの人物は政府を離れても外国へ行くのではなく、日本にいて日本の事をするだけです。何を心配するに足りましょう。
解説
人材流出の懸念に対する答えです。政府は人手不足ではなく人余りだ、と返し、仕事を簡素にして人を減らせば一挙両得だと言う。無用な仕事を作って有用な人を使う愚を突いています。そして最後の一行が明快です。政府を出ても日本にいて日本の事をするだけだから、国から見れば損はない。組織の視点と全体の視点を分けた議論です。
この章句が説くこと
人員簡素流出全体無用
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