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学問のすゝめ / 四編・付録・いまだ試みずして成否を疑う者

本論につき二、三の問答あり、よってこれを巻末に記す。その一にいわく、「事をなすは有力なる政府によるの便利に若かず」と。答えていわく、「文明を進むるはひとり政府の力のみに依頼すべからず、その弁論すでに本文に明らかなり。かつ政府にて事をなすはすでに数年の実験あれどもいまだその奏功を見ず、あるいは私の事もはたしてその功を期し難しといえども、議論上において明らかに見込みあればこれを試みざるべからず。いまだ試みずしてまずその成否を疑う者はこれを勇者と言うべからず」

書き下し

本論につき二、三の問答あり、よってこれを巻末に記す。その一にいわく、「事をなすは有力なる政府によるの便利に若かず」と。答えていわく、「文明を進むるはひとり政府の力のみに依頼すべからず、その弁論すでに本文に明らかなり。かつ政府にて事をなすはすでに数年の実験あれども、いまだその奏功を見ず。あるいは私の事もはたしてその功を期し難しといえども、議論上において明らかに見込みあれば、これを試みざるべからず。いまだ試みずして、まずその成否を疑う者は、これを勇者と言うべからず」。

現代語訳

本論について二、三の問答がありますので、これを巻末に記します。その一つはこうです。事を行うには、力のある政府に頼るほうが便利ではないか、と。答えて言います。文明を進めるのは政府の力だけに頼ってはならない、その議論はすでに本文で明らかです。しかも政府で事を行うことはすでに数年の実験がありながら、まだその成果を見ていません。あるいは民間の事も、その成功を期待するのが難しいとしても、議論のうえではっきり見込みがあるなら、試みなければなりません。まだ試みもしないうちに、まずその成否を疑う者は、勇者とは言えません。

解説

付録の問答が始まります。政府に頼るほうが便利だ、という反論に対して、すでに数年やってみて成果が出ていないという事実を返します。便利かどうかではなく、実際に何が生まれたかで判断せよ、ということです。そして最後の一行が力強い。試しもしないうちに成否を疑う者は勇者ではない。議論のうえで見込みが立つなら、まず手を着けよという実践の態度で、机の上だけで可否を裁く議論好きの構えを退けています。

この章句が説くこと

問答実験試行勇気成否

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