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学問のすゝめ / 四編・学者の職分を論ず・人民のよるべき標的を示す者

右所論をもって考うれば、方今わが国の文明を進むるには、まずかの人心に浸潤したる気風を一掃せざるべからず。これを一掃するの法、政府の命をもってし難し、私の説諭をもってし難し、必ずしも人に先だって私に事をなし、もって人民のよるべき標的を示す者なかるべからず。今この標的となるべき人物を求むるに、農の中にあらず、商の中にあらず、また和漢の学者中にもあらず、その任に当たる者はただ一種の洋学者流あるのみ。

書き下し

右所論をもって考うれば、方今わが国の文明を進むるには、まずかの人心に浸潤したる気風を一掃せざるべからず。これを一掃するの法、政府の命をもってし難し、私の説諭をもってし難し、必ずしも人に先だって私に事をなし、もって人民のよるべき標的を示す者なかるべからず。今この標的となるべき人物を求むるに、農の中にあらず、商の中にあらず、また和漢の学者中にもあらず、その任に当たる者は、ただ一種の洋学者流あるのみ。

現代語訳

以上の議論から考えれば、今わが国の文明を進めるには、まずあの人の心に染み込んだ気風を一掃しなければなりません。これを一掃する方法は、政府の命令によっては難しく、個人の説諭によっても難しい。必ず人に先立って民間で事を行い、それによって人民が拠りどころとすべき目印を示す者がなければなりません。今この目印となるべき人物を求めると、農民の中にはなく、商人の中にもなく、また和漢の学者の中にもない。その任に当たる者は、ただ一種の洋学者しかいません。

解説

気風を変える方法が絞り込まれます。命令でも説諭でもなく、先に自分でやって見せること。標的すなわち目印という言葉が使われ、人々が真似られる実例を作れと言います。そして担い手を探して、農にも商にも和漢の学者にもいないと消去していく。残ったのが洋学者、つまり福沢自身の属する層です。自分に矢が向く構成になっており、次の段でその洋学者も当てにならないと続きます。

この章句が説くこと

気風実例標的洋学者消去

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