学問のすゝめ / 三編・一身独立して一国独立すること・人を放ちてともに苦楽を与にす
右三ヵ条に言うところはみな、人民に独立の心なきより生ずる災害なり。今の世に生まれいやしくも愛国の意あらん者は、官私を問わずまず自己の独立を謀り、余力あらば他人の独立を助け成すべし。父兄は子弟に独立を教え、教師は生徒に独立を勧め、士農工商ともに独立して国を守らざるべからず。概してこれを言えば、人を束縛してひとり心配を求むるより、人を放ちてともに苦楽を与にするに若かざるなり。
書き下し
右三ヵ条に言うところはみな、人民に独立の心なきより生ずる災害なり。今の世に生まれ、いやしくも愛国の意あらん者は、官私を問わずまず自己の独立を謀り、余力あらば他人の独立を助け成すべし。父兄は子弟に独立を教え、教師は生徒に独立を勧め、士農工商ともに独立して国を守らざるべからず。概してこれを言えば、人を束縛してひとり心配を求むるより、人を放ちてともに苦楽を与にするに若かざるなり。
現代語訳
以上の三か条で言ったことはみな、人民に独立の心がないことから生じる災害です。今の世に生まれて、仮にも国を愛する心のある者は、官民を問わず、まず自分の独立を図り、余力があれば他人の独立を助けて成し遂げさせるべきです。父兄は子弟に独立を教え、教師は生徒に独立を勧め、士農工商ともに独立して国を守らねばなりません。おおまかに言えば、人を縛って自分ひとりで心配を背負うより、人を解き放ってともに苦楽をともにするほうがよいのです。
解説
三編の結論です。まず自分の独立、余力があれば他人の独立。順序が明確で、他人を助ける前に自分を立てよ、と言います。そして最後の一行が、統治の原理として提出されます。人を縛って一人で心配するより、解き放ってともに苦楽を分かつほうがよい。管理と委任のどちらを取るかという、今日の組織運営にそのまま通じる命題です。
この章句が説くこと
独立順序教育委任苦楽
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