学問のすゝめ / 三編・一身独立して一国独立すること・禍は思わぬところに起こる
こののち万々一も外国人雑居などの場合に及び、その名目を借りて奸を働く者あらば、国の禍、実に言うべからざるべし。ゆえに人民に独立の気力なきはその取扱いに便利などとて油断すべからず。禍は思わぬところに起こるものなり。国民に独立の気力いよいよ少なければ、国を売るの禍もまたしたがってますます大なるべし。すなわちこの条のはじめに言える、人に依頼して悪事をなすとはこのことなり。
書き下し
こののち万々一も外国人雑居などの場合に及び、その名目を借りて奸を働く者あらば、国の禍、実に言うべからざるべし。ゆえに人民に独立の気力なきは、その取扱いに便利などとて油断すべからず。禍は思わぬところに起こるものなり。国民に独立の気力いよいよ少なければ、国を売るの禍もまたしたがってますます大なるべし。すなわちこの条のはじめに言える、人に依頼して悪事をなすとは、このことなり。
現代語訳
この後、万が一にも外国人が雑居するような事態になり、その名前を借りて悪事を働く者があれば、国の禍は実に言いようがないでしょう。ですから人民に独立の気力がないことを、扱いやすくて好都合だなどと油断してはなりません。禍は思わぬところに起こるものです。国民に独立の気力が少なければ少ないほど、国を売る禍もまた大きくなるでしょう。すなわちこの条の初めに言った、人に頼って悪事をなす、とはこのことです。
解説
従順な国民は扱いやすいという考えへの、最終的な反論です。油断するな、と言う。独立心のない者は、より強い相手が現れればそちらに寄りかかる。だから外国人の名を借りて国を売る者が出る、という警告です。従順さは忠誠の保証ではないという指摘で、依存の相手は状況次第で変わるという冷静な見立てになっています。禍は思わぬところに起こる、という一行が効いています。
この章句が説くこと
従順依存油断警告売国
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