学問のすゝめ / 初編・身も家も天下国家も独立すべし
これらの学問をするに、いずれも西洋の翻訳書を取り調べ、たいていのことは日本の仮名にて用を便じ、あるいは年少にして文才ある者へは横文字をも読ませ、一科一学も実事を押え、その事につきその物に従い、近く物事の道理を求めて今日の用を達すべきなり。右は人間普通の実学にて、人たる者は貴賤上下の区別なく、みなことごとくたしなむべき心得なれば、この心得ありて後に、士農工商おのおのその分を尽くし、銘々の家業を営み、身も独立し、家も独立し、天下国家も独立すべきなり。
書き下し
これらの学問をするに、いずれも西洋の翻訳書を取り調べ、たいていのことは日本の仮名にて用を便じ、あるいは年少にして文才ある者へは横文字をも読ませ、一科一学も実事を押え、その事につきその物に従い、近く物事の道理を求めて今日の用を達すべきなり。右は人間普通の実学にて、人たる者は貴賤上下の区別なく、みなことごとくたしなむべき心得なれば、この心得ありて後に、士農工商おのおのその分を尽くし、銘々の家業を営み、身も独立し、家も独立し、天下国家も独立すべきなり。
現代語訳
これらの学問をするには、いずれも西洋の翻訳書を調べ、たいていのことは日本の仮名で用を足し、あるいは年若くて文才のある者には横文字も読ませ、どの学科も実際の事柄をおさえ、その事柄につきその物に即して、身近なところから物事の道理を求めて今日の用を足すべきです。これが人として普通の実学であり、人たる者は身分の上下の区別なく、みなことごとく身につけるべき心得ですから、この心得があって後に、士農工商それぞれがその分を尽くし、めいめいの家業を営み、身も独立し、家も独立し、天下国家も独立するのです。
解説
初編の結論にあたる一段です。身の独立、家の独立、天下国家の独立という三段階が示されます。順序が下から上であることが決定的で、個人が独立しなければ国も独立しない、という主張は第三編でさらに展開されます。また実学を身分の区別なく全員に求めるところも重要で、学問を特権から義務へ組み替えています。翻訳書を使えばよく、仮名で足りるという現実的な指示も福沢らしい。
この章句が説くこと
実学独立順序身分翻訳
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